独身だと早く死ぬ?
一言でいうと...
統計上は、はい。 結婚していない人は既婚者より死亡率が高く、その差は男性で大きい傾向があります。ただし、独身そのものが寿命を縮めると証明されたわけではありません。
詳しくは...
ここでいう「独身」には注意が必要です。研究では、結婚したことがない人だけを指す「未婚」と、未婚・離婚・死別をまとめた「非婚」が使い分けられています。事情の異なる人を一つにまとめると、何が関係しているのかが見えにくくなります。
日本でも、未婚者の死亡率は高かった
日本の40〜79歳、94,062人を平均9.9年間追った研究では、既婚者と比べた未婚者の全死亡率は、男性で91%高く、女性で46%高いという結果でした(Ikeda et al., 2007)。喫煙、飲酒、運動、学歴、仕事、健康診断への関心、持病などの違いを計算に入れても、差は残りました。
この「91%高い」は、未婚男性の91%が死亡したという意味でも、寿命が91%短いという意味でもありません。同じ年齢層などで比べたとき、追跡期間中に亡くなる速さの比が1.91倍だった、という意味です。
アジアの16件の追跡研究、計623,140人をまとめた解析でも、非婚者の全死亡率は既婚者より15%高く、結婚歴のない人に限ると62%高くなっていました。差は男性と65歳未満で大きい傾向がありました(Leung et al., 2022)。
男性のほうが差は大きい
21件の追跡研究、約788万人をまとめた解析では、既婚者と比べた非婚者の全死亡率は男性で46%、女性で22%高くなっていました。結婚歴のない人に限ると、男性67%、女性46%でした(Wang et al., 2020)。男性で差が大きいという話には、実際に根拠があります。
考えられる理由の一つは、特に調査年代の古い世代では、男性が配偶者に食事、受診の後押し、体調の変化への気づき、日常的な相談相手といった支えを頼る割合が高かったことです。独身男性では喫煙、運動不足、健診への関心の低さなどが多い傾向も報告されています。ただし、どの仕組みがどれだけ差を生んだかは確定していません。
大切なのは、婚姻届だけではない
148件、計308,849人をまとめた別の解析では、家族、友人、地域などとの社会的なつながりが強い人は、弱い人より追跡期間中に生存する可能性が50%高いという関連がありました(Holt-Lunstad et al., 2010)。一人暮らしかどうかだけで分けた場合の差は小さく、さまざまな関係を含めて測ったときの差のほうが大きい結果でした。
つまり、研究結果を「健康のために結婚すべき」と読む必要はありません。結婚していなくても、友人や家族との連絡、地域や趣味の集まり、定期的な健診、食事や運動の習慣、困ったときの連絡先を意識して持つことはできます。反対に、結婚していても関係が悪かったり孤立していたりすれば、同じ支えが得られるとは限りません。
ただし...
結婚するかどうかを無作為に割り当てることはできないため、根拠はすべて観察研究です。健康で経済的に安定した人ほど結婚しやすく、結婚生活も続きやすいという「選択」の影響があります。多くの研究は喫煙、飲酒、学歴、持病などを調整していますが、性格、収入の変化、幼少期の環境、関係の質などを完全には取り除けません。したがって、結婚そのものが死亡率を下げたとは断定できません。
「非婚」には未婚、離婚、死別が含まれますが、それぞれの健康状態や生活環境は異なります。また、婚姻状況は調査開始時の一度だけ測られることが多く、その後の結婚や離婚、同棲は十分に反映されません。法律上の婚姻、同居、孤独感、実際の支援関係も同じものではありません。
日本の研究は1988〜1990年に調査を始めた40〜79歳が対象で、当時の性別役割や結婚観は現在と異なります。国際的な解析でも対象は主に中高年で、国や年代によって結果にばらつきがあります。男女差は生まれつきの違いだけで説明できず、社会的な役割や支援の受け方に左右される可能性があります。性別も多くの研究で男女の二分類に限られていました。
ここで示した数字は相対的な死亡率であり、「何年早く亡くなるか」を直接表すものではありません。若い人のように元の死亡率が低い集団では、相対的な差が大きくても実際の人数差は小さいことがあります。
以上から、このページの確信度は「中」です。大規模な追跡研究とメタ解析で関連は一貫し、男性で強い傾向も確認されていますが、結婚そのものの因果効果と、現在の日本人一人ひとりへの影響の大きさは確定できません。
参考文献
- Ikeda, A., Iso, H., Toyoshima, H., Fujino, Y., Mizoue, T., Yoshimura, T., Inaba, Y., & Tamakoshi, A. (2007). Marital status and mortality among Japanese men and women: the Japan Collaborative Cohort Study. BMC Public Health, 7, 73. https://doi.org/10.1186/1471-2458-7-73
- Leung, C. Y., Huang, H.-L., Abe, S. K., et al. (2022). Association of Marital Status With Total and Cause-Specific Mortality in Asia. JAMA Network Open, 5(5), e2214181. https://doi.org/10.1001/jamanetworkopen.2022.14181
- Wang, Y., Jiao, Y., Nie, J., et al. (2020). Sex differences in the association between marital status and the risk of cardiovascular, cancer, and all-cause mortality: a systematic review and meta-analysis of 7,881,040 individuals. Global Health Research and Policy, 5, 4. https://doi.org/10.1186/s41256-020-00133-8
- Holt-Lunstad, J., Smith, T. B., & Layton, J. B. (2010). Social Relationships and Mortality Risk: A Meta-analytic Review. PLOS Medicine, 7(7), e1000316. https://doi.org/10.1371/journal.pmed.1000316