雨の日でも日焼け止めは塗ったほうがいいの?

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一言でいうと...

外に長くいるなら、雨の日でも塗ったほうがいい。 ただし「雨でも紫外線は変わらない」からではありません。厚い雨雲は紫外線をかなり減らします。 それでもゼロにはならないので、決め手は「雨かどうか」ではなく「その日のUVインデックス」と「外にいる時間」です。 傘をさして5分歩くだけなら気にしなくていいし、雨の日に3時間外にいるなら塗る意味があります。

詳しくは...

雲は紫外線を減らす。でもゼロにはしない

雲がかかると紫外線がどれくらい減るかは、「雲がないときの何割が届いたか」という数字で測ります。

スペイン・グラナダで実際に測った研究では、空一面が雲に覆われた状態で、 そこそこ厚い雲なら約7割、かなり厚い雲でも約2.5割の紫外線が地上まで届いていましたRomán et al., 2012)。

つまり、どんなに厚い雲でも「晴れた日の4分の1」くらいは残るということです。 夏の晴れた昼にUVインデックスが10になる場所なら、厚い雲の下でも2〜3くらいは残る計算になります。 これは「日陰にいる」のと同じくらいで、「紫外線がない」状態ではありません。

なお、この研究が測ったのは雨が降っていない雲です。実際の雨雲はもっと厚くなることが多いので、 土砂降りの最中はこれより少ないと考えていいでしょう。ただし「雨が降っている時間」と 「雨の日に外にいる時間」は同じではありません。降り止んだ薄曇りの時間帯が一日の大半、というのは普通にあります。

いちばんの落とし穴は「体感が当てにならない」こと

雲は紫外線だけでなく、明るさ(可視光)と暑さ(赤外線)も一緒に減らします。 しかも減り方が同じではありません。だから「暗いし涼しいから紫外線も少ないはず」という体感が、 そのままズレになります。実際、雲の種類ごとに紫外線と日射全体を別々に測った研究があり、 両者は一致しません(Piacentini et al., 2009)。

ついでに言うと、窓ガラスも安心材料になりません。紫外線にはUVBとUVAの2種類があり、 市販のガラスはUVBをほぼ止めますが、UVAはガラスの種類によっては通します。 合わせガラスは防ぎますが、強化ガラスは通す (Almutawa et al., 2013)。 雨の日に車の運転席や窓際で長時間過ごすなら、屋内だから大丈夫とは言えません。

「毎日塗る」効果は実験で確かめられている

ここが実は大事なところです。日焼け止めの効果は「日差しの強い日に塗る」ではなく、 「毎日塗る」というやり方で検証されています。

オーストラリアのナンバー(クイーンズランド州)で、成人1621人を 「毎日塗るグループ」と「本人の判断で塗るグループ」にくじ引きで分けた実験があります。

  • 肌の老化: 4年半後、毎日塗ったグループは肌の老化の進み方が24%少なかったHughes et al., 2013)。 毎日塗ったグループでは、老化の進行そのものが検出されませんでした。
  • メラノーマ(皮膚がんの一種): 実験終了から10年後まで追跡したところ、新しく見つかった数は 毎日塗った群11人 vs 自分の判断で塗った群22人。とくに進行したタイプに絞ると3人 vs 11人で、 リスクが約4分の1でした(Green et al., 2011)。
  • おおもとの実験は Green et al., 1999(同じ集団で皮膚がんの予防を調べたもの)。

この「毎日」には、当然曇りの日も雨の日も入っています。 効果が確かめられたのはこのやり方であって、「晴れた日だけ選んで塗る」やり方が 同じくらい効くかどうかは、同じ強さでは検証されていません。

弱い紫外線でも、積み重なる

海辺の真昼のような強烈な日差しだけが問題なのではありません。 日常生活レベルの弱い紫外線でも、肌には変化が起きます。 これは人工皮膚モデルと実際のヒトの肌の両方で確認されていて、この領域ではUVAの影響が大きいことが分かっています (Marionnet et al., 2014)。 雨の日の外出がまさにこれ — 弱いけれど、回数が多い曝露です。

結局どうすればいいか

  • 「天気」で決めるのをやめて、「UVインデックス × 外にいる時間」で決める。 気象庁がUVインデックスを毎日公開しています。目安として3以上なら対策、が国際的な基準です。
  • 雨の日に傘をさして数分歩くだけなら、塗る意味は小さい。
  • 雨の日でも数時間外にいる/窓際や運転席で長く過ごすなら、塗る意味がある。
  • 現実的には、「雨の日は塗らない」と天気ごとに判断するより、 「毎朝塗る」と無条件に決めてしまうほうがラクです。しかもそれが、 実験で効果が確かめられたやり方そのものでもあります。

ただし...

ここに書いたことは確定した事実ではありません。どの研究にも、どこまで言えてどこから言えないかの線があります。 以下はその線引きで、読むときに割り引くべき点です。

  • 雨天そのものの紫外線減衰を直接測った研究は見つけていない。 引用した Román et al. (2012) は 非降水性の水雲を対象としており、降水中の雲への外挿には注意が必要。方向としては 「雨雲下の紫外線はこの推定より低い」側に働く。
  • 減衰率は地点・雲種・太陽高度に強く依存する。 グラナダ(南スペイン)の値をそのまま日本の 梅雨の空に当てはめることはできない。日本での実測値は未確認。
  • Nambour試験の外的妥当性。 クイーンズランド州は世界有数の高UV地域で、被験者は主に 白人系(Fitzpatrick I–III が多い集団)。日本人を含むより濃い皮膚色の集団や、 中高緯度の低UV環境では、絶対的な便益は小さくなると考えられる。相対リスク減少がそのまま 移植できるかは別問題。
  • Hughes et al. (2013) の限界は原著も認めている: 欠測データがあり、中等度の効果を 検出する検出力は限定的だった。光老化の効果量は相対オッズ 0.76 (95% CI 0.59–0.98)。
  • メラノーマの主要解析は P = .051 で、慣習的な有意水準をわずかに満たしていない (HR 0.50, 95% CI 0.24–1.02)。浸潤性メラノーマのサブ解析(HR 0.27, 95% CI 0.08–0.97)は 有意だが、イベント数が少ない(3 vs 11)ため推定は不安定。
  • 日焼け止めの効果は塗布量に強く依存する。 RCTの効果量は試験下での塗布行動に基づくもので、 実生活での薄塗り・塗り直しなしの条件では便益は縮小する。
  • ビタミンDへの影響は本ページでは検討していない。毎日塗布と血中25(OH)D濃度の関係は 別途サーベイが必要。
  • Green et al. (1999) は要旨が OpenAlex で取得できなかったため、具体的な効果量は原著未確認。 ここでは親試験の存在と設計のみを引用している。

参考文献

  • Román, R., Bilbao, J., & de Miguel, A. (2012). Experimental and modeled UV erythemal irradiance under overcast conditions: the role of cloud optical depth. Atmospheric Chemistry and Physics, 12, 11723–11732. https://doi.org/10.5194/acp-12-11723-2012
  • Piacentini, R. D., et al. (2009). Effect of different types of clouds on surface UV-B and total solar irradiance at southern mid-latitudes: CMF determinations at Córdoba, Argentina. Atmospheric Environment. https://doi.org/10.1016/j.atmosenv.2009.02.065
  • Almutawa, F., et al. (2013). Current status of photoprotection by window glass, automobile glass, window films, and sunglasses. Photodermatology, Photoimmunology & Photomedicine, 29(2). https://doi.org/10.1111/phpp.12022
  • Hughes, M. C. B., Williams, G. M., Baker, P., & Green, A. C. (2013). Sunscreen and prevention of skin aging: a randomized trial. Annals of Internal Medicine, 158(11), 781–790. https://doi.org/10.7326/0003-4819-158-11-201306040-00002
  • Green, A. C., Williams, G. M., Logan, V., & Strutton, G. M. (2011). Reduced melanoma after regular sunscreen use: randomized trial follow-up. Journal of Clinical Oncology, 29(3), 257–263. https://doi.org/10.1200/jco.2010.28.7078
  • Green, A., et al. (1999). Daily sunscreen application and betacarotene supplementation in prevention of basal-cell and squamous-cell carcinomas of the skin: a randomised controlled trial. The Lancet, 354(9180), 723–729. https://doi.org/10.1016/s0140-6736(98)12168-2
  • Marionnet, C., Tricaud, C., & Bernerd, F. (2014). Exposure to non-extreme solar UV daylight: spectral characterization, effects on skin and photoprotection. International Journal of Molecular Sciences, 16(1), 68–90. https://doi.org/10.3390/ijms16010068