準備運動って意味あるの?
一言でいうと...
はい、意味があります。 軽く動きながら本番に近い動作へ進む準備運動は、その直後の動きやすさを高めます。ただし、じっと筋肉を伸ばすだけでは、けが予防や運動能力への効果は限られます。
詳しくは...
準備運動というと、前屈やアキレス腱伸ばしを思い浮かべるかもしれません。しかし研究で効果が確かめられている準備運動は、それだけではありません。軽いジョギング、関節を動かす運動、短いダッシュ、ジャンプ、バランス練習などを組み合わせ、これから行う運動に少しずつ近づけていくものです。
本番の動きは、よくなりやすい
準備運動と、その後の運動能力を調べた32件の研究をまとめた解析では、調べられた項目の79%で準備運動後に成績がよくなりました(Fradkin et al., 2010)。この解析では、ストレッチ以外の活動を含む準備運動が対象でした。
たとえば、いきなり全力で走る代わりに、ゆっくり走るところから始め、脚を大きく動かし、最後に短い加速を入れます。そうすると筋肉の温度が上がり、神経と筋肉がこれから使う動きを予行演習できます。準備運動は体を柔らかくする儀式というより、本番へ段階的に切り替える時間です。
ただし、79%という数字は「運動能力が79%上がる」という意味ではありません。研究で調べた走る、跳ぶ、投げるなどの項目のうち、改善が報告された割合です。改善の大きさは競技や準備運動の内容によって異なります。
けが予防は、「何を入れるか」が重要
25件、計26,610人の試験をまとめた研究では、筋肉を伸ばすストレッチだけでは、けがは明確に減りませんでした。一方、筋力、バランス、複数の運動を組み合わせたプログラムでは、けがが少ない傾向がありました(Lauersen et al., 2014)。
若いスポーツ選手などを対象にした別のレビューでも、ストレッチに加えて筋力、バランス、方向転換、着地練習などを含む準備運動は、脚のけがを減らしました。サッカー向けの「11+」というプログラムでは、脚全体のけがのリスクが33%低くなりました(Herman et al., 2012)。
これは、運動前に一度体を温めればその日だけ守られる、という話ではありません。成功したプログラムの多くは、毎回の練習で3か月以上続けていました。準備運動の時間を使って、着地やバランスの能力そのものを練習した結果も含まれます。
長く伸ばせばよいわけでもない
動かずに一定の姿勢を保つものを「静的ストレッチ」といいます。106件の研究をまとめた解析では、一つの筋肉を30秒未満伸ばしても、その直後の最大筋力への悪影響はほぼありませんでした。30〜45秒でも明確な低下はありませんでしたが、60秒以上になると筋力やパワーが一時的に下がりやすくなりました(Kay & Blazevich, 2012)。
短い静的ストレッチを準備運動に入れてはいけない、という意味ではありません。柔軟性が必要な競技では役立つこともあります。ただ、全力疾走や高く跳ぶ直前に長時間伸ばして終わるより、その後に動きを伴う運動を入れるほうが本番への準備になります。
実際には、次のような順番が分かりやすいでしょう。
- 歩く、軽く走るなど、楽な動きから始める
- 腕や脚、関節を動かす範囲を少しずつ広げる
- スクワット、片脚立ち、軽いジャンプなどを目的に応じて入れる
- 最後に、これから行う運動を弱い力で試す
汗だくになったり、疲れ切ったりする必要はありません。「本番の最初の数分を、より簡単な形で先に行う」と考えると実践しやすくなります。
ただし...
「準備運動」は内容が広く、どんな方法でも同じ効果が出るわけではありません。Fradkinらの解析では32件の研究の質は一定以上と評価されましたが、よく設計された無作為化試験は少なく、競技、対象者、測定項目もばらばらでした。
けが予防で効果が出たのは、主に若いサッカー、バスケットボール、バレーボール選手や軍の訓練参加者が、決められた複合プログラムを繰り返した場合です。一般の中高年、個人競技、軽い散歩などに同じ数字を当てはめることはできません。Hermanらのレビューでも、主な対象は13〜26歳で、男性や高齢者への外的妥当性が限られるとされています。
Lauersenらの解析で、ストレッチ単独のけが予防効果が見つからなかったことは、「ストレッチには一切意味がない」という結論ではありません。関節の動く範囲を一時的に広げる目的や、長期的に柔軟性を高める目的は別に考える必要があります。また、筋力トレーニングなどの予防効果には、運動前に行ったことより、繰り返し練習した効果が含まれます。
準備運動をしても、けがを完全に防ぐことはできません。痛みがある状態で無理に動かしたり、準備運動をしたからと急に負荷を上げたりしないでください。持病やけががある場合は、医師や理学療法士などに運動内容を相談する必要があります。
以上から、このページの確信度は「中〜高」です。運動能力への短期的な効果と、定型的な複合プログラムによるけが予防には複数の研究がありますが、あらゆる人・運動・準備運動に共通する効果とは言えません。
参考文献
- Fradkin, A. J., Zazryn, T. R., & Smoliga, J. M. (2010). Effects of warming-up on physical performance: a systematic review with meta-analysis. Journal of Strength and Conditioning Research, 24(1), 140–148. https://doi.org/10.1519/JSC.0b013e3181c643a0
- Herman, K., Barton, C., Malliaras, P., & Morrissey, D. (2012). The effectiveness of neuromuscular warm-up strategies, that require no additional equipment, for preventing lower limb injuries during sports participation: a systematic review. BMC Medicine, 10, 75. https://doi.org/10.1186/1741-7015-10-75
- Lauersen, J. B., Bertelsen, D. M., & Andersen, L. B. (2014). The effectiveness of exercise interventions to prevent sports injuries: a systematic review and meta-analysis of randomised controlled trials. British Journal of Sports Medicine, 48(11), 871–877. https://doi.org/10.1136/bjsports-2013-092538
- Kay, A. D., & Blazevich, A. J. (2012). Effect of acute static stretch on maximal muscle performance: a systematic review. Medicine & Science in Sports & Exercise, 44(1), 154–164. https://doi.org/10.1249/MSS.0b013e318225cb27