男女で髪質って違うの?

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一言でいうと...

髪の毛そのものは、男女で大きくは違わないようです。はっきり違うのは、髪を生やしている頭皮の脂の量のほうです。 太さなどの違いは、男女差よりも、生まれ育った地域(民族)や年齢による差のほうが目立ちます。「男性用」「女性用」は性別で選ぶより、自分の頭皮がべたつきやすいか、乾きやすいかで選べば十分です。

詳しくは...

「髪質」という言葉には、実は2つのものが混ざっています。1つは、頭の外に伸びている髪の毛そのもの(太さ、伸びる速さ、丈夫さ)。もう1つは、その髪が生えている頭皮の状態、とくに脂(皮脂)の出かたです。この2つを分けて見ると、話がすっきりします。

髪の毛そのもの: 男女差は小さく、ほかの差のほうが大きい

世界5大陸・24の民族の若い大人2,249人(18〜35歳、男女)の髪を測った大きな調査があります。髪の濃さや伸びる速さには、頭のどの部分か、性別、出身地域による違いがありましたが、要旨で大きく取り上げられているのは地域による違いでした。アフリカ系の髪は本数が少なめで伸びるのがゆっくり、アジア系の髪は太くて速く伸びる、ヨーロッパ系は本数が多い、という傾向です(Loussouarn et al., 2016)。

アジア系の髪が太いことには、遺伝子の裏付けもあります。東アジアの人に多い、ある遺伝子(EDAR)の型を持つ人ほど髪が太いことが確かめられています(Fujimoto et al., 2008)。アジア系の髪は、表面を覆ううろこ状の層(キューティクル)も厚く、引っぱりに強い傾向があるとまとめられています(Leerunyakul & Suchonwanit, 2020a)。つまり、日本人の男女の髪は、たとえばヨーロッパ系の女性の髪よりも、お互いに似ていると考えられます。

男女の違いが数字で見えている項目もあります。ヨーロッパ系の人の髪約6万本の伸びかたを調べた研究では、女性の髪のほうが男性より速く伸びる傾向がありました(Van Neste & Rushton, 2016)。ただしこの研究では、太い髪ほど速く伸びるという関係も確認されています。アジア系とヨーロッパ系の髪1,000本以上を顕微鏡で調べた別の研究でも、太い髪ほど速く伸び、キューティクルの並びも詰まっていて、この関係は民族を問わず同じでした(Saint Olive Baque et al., 2012)。髪の性質は、性別で決まるというより、1本1本の太さでおおむね決まると言えそうです。

太さそのものの男女差は、はっきりしません。アラブ系の120人を調べた研究では、髪の平均の太さは約87マイクロメートル(0.087ミリ)で、男女で違いが出たのは後頭部の本数だけでした(Alsharif & AlGhamdi, 2022)。

むしろ目立つのは年齢による変化です。ヨーロッパ系の女性約1,400人を調べた研究では、頭のてっぺん付近の髪は20歳から40〜45歳ごろまで太くなり、そのあと細くなっていきました。本数は20代がいちばん多く、あとは年とともに減りました(Robbins et al., 2012)。タイの239人の調査でも、年齢とともに本数が減っていました(Leerunyakul & Suchonwanit, 2020b)。

男女で大きく違ってくるのは、年齢を重ねたあとの薄毛です。男性ホルモンは、ひげやわき毛を濃くする一方で、頭のてっぺんの髪を作る部分を小さくしてしまうことがあります(Randall, 2008)。日本人男性369人を調べた研究では、男性型の薄毛の人は、太い髪(0.08ミリ超)の割合が少なく、産毛のような細い毛の割合が多くなっていました(Ishino et al., 2014)。ただしこれは、髪の生まれつきの性質ではなく、髪を作る部分の変化です。シャンプーを男性用に替えれば防げる、というものでもありません。

なお、髪のたんぱく質を精密に分析すると、男女を見分ける手がかりになる成分がいくつか見つかる、という研究もあります(Adav et al., 2023)。違いが「ゼロ」なわけではありませんが、実験室の分析で見えるレベルの話で、手ざわりや洗い上がりの違いにつながるかどうかは分かっていません。

頭皮の脂: ここは男女ではっきり違う

一方、頭皮の脂の量には、はっきりした男女差があります。

日本を含む7つの民族グループ、計1,325人の頭皮で、シャンプーしたあと脂がどのくらい戻ってくるかを測った研究があります。どの民族でも、男性のほうが女性より脂が多く、年齢が上の人ほど少ない、という結果でした。ただし、民族による差も「驚くほど」大きく、日本人は7グループ中3番目に多いグループでした(Pouradier et al., 2017)。

顔など頭皮以外の皮膚でも同じ傾向です。300人を調べた研究では、男性の皮脂は年齢を問わず女性より多く、年をとっても減りませんでしたが、女性は年齢とともに減っていきました(Luebberding et al., 2013)。中国の713人の調査でも、13〜70歳の男性はおでこの皮脂が同年代の女性より多くなっていました(Man et al., 2009)。

理由は、皮脂を出す腺が男性ホルモンで活発になるためです。女性でも少量の男性ホルモンは作られていますが、女性は閉経のあとに皮脂が少しずつ減っていきます(Pochi et al., 1979)。

じゃあ「男性用」「女性用」は意味がないの?

ここまでをまとめると、もし「男性用」が皮脂をしっかり落とすように作られているなら、それには頭皮の脂の男女差という、それなりの理由があると言えます。

ただし、それは「平均すると」の話です。脂の量は、民族や年齢によっても大きく変わります。脂っぽい頭皮の女性もいれば、乾燥しがちな年配の男性もいます。性別のラベルは、あなたの頭皮の状態を直接表しているわけではありません。

性別で分けた日用品については、経済学や社会学の研究もあります。歯ブラシの売上データを分析した研究では、女性向けの商品は、作るのにかかる費用が低いのに利幅が大きく、「女性向け」として差別化することでほかの商品に乗り換えられにくくなっていました(Zhang & Zhang, 2026)。シャンプーの話ではありませんが、性別で商品を分けることには、中身の違いとは別に、売り方としての意味もあることが分かります。

選ぶときの目安は次の通りです。

  • 夕方には頭皮がべたつく、においが気になる → 洗浄力がしっかりしたものを試してみる。
  • 頭皮がつっぱる、乾いてかゆい、パーマやカラーで毛先が傷んでいる → 洗浄力がおだやかなものにしたり、コンディショナーを併用したりしてみる。
  • 性別の表示ではなく、使ってみて頭皮と髪がどうなるかで決めてよい。

ただし...

  • 男性用と女性用のシャンプーの処方(成分や洗浄力)を実際に比べた研究は見つからなかった。 性別で分けた日用品の価格や差別化を扱った研究として、Moshary et al. (2026) と Guittar et al. (2022) の存在は確認したが、どちらも要旨が十分に得られず(原著未確認)、シャンプーについて何を示したかは確認できていない。Zhang & Zhang (2026) は米国の歯ブラシのデータで、ヘアケア用品にそのまま当てはまるとは限らない。したがって「男性用と女性用の中身は同じ」とも「違う」とも言えない。
  • 髪そのものの男女差を正面から比べた研究は少ない。Loussouarn et al. (2016) は性別による差があったと報告しているが、要旨には性別ごとの方向や大きさが書かれていない。Van Neste & Rushton (2016) はヨーロッパ系のみで、女性の髪が速く伸びる差が太さの違いでどこまで説明できるかは要旨からは分からない。Alsharif & AlGhamdi (2022) は120人の横断研究で、性別の比較に十分な人数とは言えない。「男女差は小さい」は、大きな差を示す研究が見当たらないという意味であり、差がないことを証明したものではない。
  • 頭皮の皮脂の男女差は、民族をまたいだ大規模な研究(Pouradier et al., 2017)と、頭皮以外の皮膚の研究(Luebberding et al., 2013; Man et al., 2009; Pochi et al., 1979)で方向が一致しているため、比較的確かだと考えられる。ただし Pouradier et al. (2017) の要旨では男女差の大きさが数値で示されておらず、頭皮の脂の量には洗う頻度などの生活習慣も影響するとされている。Luebberding et al. と Man et al. はおでこなどの測定で、頭皮そのものではない。
  • 髪の太さや丈夫さについての研究の多くはヨーロッパ系・アラブ系・タイの人が対象で、日本人の男女を比べた大規模なデータは見つからなかった。Ishino et al. (2014) は日本人だが男性のみ。アジア系の髪のキューティクルや強さについては、レビュー(Leerunyakul & Suchonwanit, 2020a)の記述であり、効果量は原著から確かめていない。
  • Adav et al. (2023) は、たんぱく質の量から性別を見分けられる可能性を示した探索的な研究で、どの成分がどれだけ違うか、それが髪の物性に影響するかは要旨からは分からない。
  • 最後の選び方の目安は、皮脂の量の違いから考えた一般的なもので、特定の洗浄成分やシャンプーを比べた試験に基づくものではない。
  • ここで言う「男女」は、主に成人の生物学的な性差(とくに男性ホルモンの量)の話。ホルモンの状態は、同じ性別の中でも年齢や体質、治療などで変わる。
  • 薄毛・抜け毛・強いフケやかゆみは、シャンプーの選択だけで解決する問題ではない。気になる場合は皮膚科で相談するとよい。

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参考文献

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