ニキビの原因って菌なの!?

美容 皮膚スキンケア病気確度: 中〜高

一言でいうと...

半分だけ正解です。菌はニキビの「一因」ですが、菌だけが原因ではありません。 アクネ菌は、ニキビのない人の肌にもふつうに住んでいます。皮脂が増えること、毛穴がつまること、体の炎症の起こしやすさなどが重なって、はじめてニキビになります。

詳しくは...

アクネ菌は、誰の肌にもいる

ニキビと聞いて思い浮かぶ「アクネ菌」(いまの正式な名前は Cutibacterium acnes、昔は Propionibacterium acnes)。名前からして犯人のようですが、実はこの菌、顔や背中など皮脂の多い場所に住む、ごくありふれた常在菌です。

健康な肌の菌を調べたレビューによれば、アクネ菌は健康な人の皮脂の多い場所でいちばん多い細菌で、皮脂の調整や、ほかの菌が入り込むのを防ぐなど、肌を健康に保つ側の仕事もしていると考えられています(Rozas et al., 2021)。

つまり「アクネ菌がいる=ニキビになる」なら、ほぼ全員がニキビだらけのはずです。そうなっていない以上、菌がいること自体は原因の説明になりません。

ニキビは「4つの条件」がそろってできる

皮膚科の教科書的な説明では、ニキビは次の4つが重なってできるとされています(Platsidaki & Dessinioti, 2018)。

  1. 皮脂が増える
  2. 毛穴の出口の角質が厚くなって、つまる
  3. つまった毛穴の中で、アクネ菌が関わる
  4. 炎症が起きて、赤く腫れる

菌は4つのうちの1つにすぎません。

特に大事なのが1つ目の皮脂です。皮脂の量は男性ホルモン(アンドロゲン)で決まります。生まれつき男性ホルモンが体に効かない人を調べた研究では、皮脂がまったく出ておらず、その値は思春期前の幼い子どもと同じでした(Imperato-McGinley et al., 1993)。思春期にニキビが増えるのは、ホルモンで皮脂が一気に増えるからです。皮脂はアクネ菌が暮らすための大事な環境でもあるので(Leyden et al., 1998)、菌が増える舞台を作っているのは、むしろ体の側だと言えます。

「菌が多いからできる」わけでもなさそう

では、ニキビのある人は菌が多いのでしょうか。ここは、研究によって見え方が違います。

  • 顔の皮膚の組織を取って顕微鏡で見た研究(ニキビのある人38人と、ない人)では、毛穴の中に菌のかたまりが見つかったのは、ニキビのある人で47%、ない人で21%でした(Jahns et al., 2012)。
  • 一方、肌の菌の遺伝子をまとめて読む方法で調べた研究では、アクネ菌の仲間の割合は、むしろ健康な人の肌のほうが高かったのです。違っていたのは量ではなく中身で、ニキビのある人ではアクネ菌の「系統」の構成がばらけていて、炎症を起こしやすい性質に関わる遺伝子が多く見つかりました(Barnard et al., 2016)。
  • 10代のニキビを調べた研究でも、ニキビの人の肌では特定の系統(IA1と呼ばれるもの)が多く、この系統は毛穴にくっついて膜(バイオフィルム)を作る力が強い、と報告されています(Cavallo et al., 2022)。

同じアクネ菌でも、系統によって体の免疫の反応が違うことも分かってきました。試験管の中の実験ですが、ニキビの肌から取れた系統は、健康な肌から取れた系統より炎症に関わる物質(IL-17)を多く引き出しました(Agak et al., 2017)。

こうした結果から、最近のレビューは「アクネ菌が増えすぎることがきっかけ、という昔の考えは見直されている。系統のバランスの崩れと、それに対する体の免疫の反応が大事」とまとめています(Dréno et al., 2018)。

治療からも「菌だけじゃない」が見える

菌が原因なら、菌を殺す薬(抗菌薬)が効くはずです。実際、効きます。 飲み薬の抗菌薬ミノサイクリンについて、39件の試験(6,013人)をまとめた分析では、中くらいの炎症性ニキビに効果があるとされました。ただし、ほかのよく使われる治療より優れているという証拠はなかった、とも書かれています(Garner et al., 2012)。

面白いのはここからです。

菌を減らさないほど少ない量の抗菌薬でも、ニキビは良くなりました。 抗菌薬のドキシサイクリンを、菌を殺すには足りない少量だけ6か月飲んでもらった試験(大人51人)では、偽薬の人よりニキビの数がはっきり減りました。それなのに、肌の菌の数は偽薬の人と変わらなかったのです(Skidmore et al., 2003)。 菌を減らさずに効いたということは、菌を殺す以外の働き(炎症をしずめる作用などが考えられています)で効いていた、ということになります。

光を使った治療でも似たことが起きています。背中のニキビに光の治療をした小さな試験(10人)では、ニキビは減ったのに、肌の表面のアクネ菌の数も皮脂の量も変わっていませんでした(Pollock et al., 2004)。

そして、いま最も効くとされる薬は、菌を直接狙っていません。 221件の試験(のべ約6万5千人)をまとめて治療を比べた分析では、いちばん効果が大きかったのはイソトレチノインという飲み薬でした(Huang et al., 2023)。別の大きな分析でも、中等症〜重症のニキビでは、この薬(1回の治療で飲む総量が一定以上の場合)でニキビの総数の減り方が偽薬より約58ポイント大きかったと報告されています(Mavranezouli et al., 2022)。 この薬は皮脂を作る腺の細胞そのものを減らすことで効くと考えられていて、治療1週間で皮脂腺の細胞が死んでいく様子が、患者さんの皮膚で確かめられています(Nelson et al., 2008)。菌のエサ場を小さくする薬がいちばん効く、というわけです。

菌以外にも、効いているものがある

ニキビのなりやすさに関わる要因を調べた研究をまとめると、親がニキビだった人はそうでない人の約2.9倍、太っている人は約2.4倍ニキビになりやすい、という結果でした(Heng & Chew, 2020)。

食べ物では、乳製品をよくとる人のほうがニキビが多い傾向があり、7万8千人あまりの調査をまとめた分析では、乳製品をとる人はとらない人より約1.25倍ニキビがありました(Juhl et al., 2018)。血糖値が上がりにくい食事でニキビが減るかを確かめた試験もあります(Smith et al., 2007)が、こちらは中身の要約を確認できなかったので、効果の大きさは書けません。

抗菌薬に頼りきらないほうがいい理由

菌が「唯一の原因」ではないことは、治療の考え方にも関わってきます。 抗菌薬を長く使うと、薬の効かない菌(耐性菌)が増えるからです。日本の皮膚科13施設の調査では、ニキビの治療で抗菌薬を使っている人の肌から取れたアクネ菌のほうが、テトラサイクリン系・マクロライド系・クリンダマイシンのどれについても、耐性を持つ割合が高かったと報告されています(Nakase et al., 2020)。

そのため日本皮膚科学会の治療指針では、抗菌薬は赤く腫れている時期におよそ3か月までに限り、落ち着いたあとは毛穴のつまりを防ぐ塗り薬(アダパレン)や、耐性菌を生みにくい過酸化ベンゾイルで維持することを勧めています(Hayashi et al., 2018)。

まとめると

  • アクネ菌はニキビのない人の肌にもふつうにいる常在菌で、いるだけではニキビにならない。
  • ニキビは皮脂・毛穴のつまり・菌・炎症が重なってできる。皮脂の量はホルモンで決まる。
  • ニキビと関係しているのは、菌の量より、系統のバランスや体の免疫の反応だという見方が強まっている。
  • 抗菌薬は効くが、菌を減らさない量でも効き、いちばん効く薬は皮脂を減らす薬。
  • 答えは「菌は一因。でも、菌のせいだけではない」。

ただし...

  • ニキビの人でアクネ菌が「多いか」については、研究間で結論が割れている。 培養による古い研究のまとめでは、ニキビ患者でアクネ菌が著しく多いとされ(Leyden et al., 1998)、生検の症例対照研究でも毛包内のコロニー・バイオフィルムはニキビ群で多かった(follicular colonization OR 3.37, 95% CI 1.23–9.23; Jahns et al., 2012)。一方、ショットガン・メタゲノム解析では propionibacteria の相対存在量は健常皮膚のほうが高かった(Barnard et al., 2016)。培養か配列解析か、表面か毛包内か、絶対量か相対量かで測っているものが違うため、単純には比べられない。本ページの「量より中身」という整理は、近年のレビューの多数意見(Dréno et al., 2018; O'Neill & Gallo, 2018)に沿ったもので、決着済みの事実ではない。
  • 系統(phylotype)と疾患の関連は、症例対照・横断研究による関連であり、因果の向きは分かっていない。 ニキビの炎症や皮脂の環境が、特定の系統を増やしている可能性もある。Barnard et al. (2016) の分類モデルの精度(自コホート85%、独立標本86%)も判別性能であって、系統が原因であることの証明ではない。系統の研究として基礎になっている Fitz-Gibbon et al. (2013) は要旨を確認できなかったため、存在のみを引用し、数値は原著未確認。Agak et al. (2017) は健常者の末梢血単核球を使った in vitro の実験であり、皮膚の中で同じことが起きているかは直接示されていない。レビューでは、アクネ菌はどこにでもいるためコッホの原則(ある菌がある病気の原因であることを示す古典的な条件)を満たさないと指摘されている(O'Neill & Gallo, 2018)。
  • ミノサイクリンのレビュー(Garner et al., 2012)では、組み入れ試験は概して小規模で質が低く、メタ解析ができた場面は限られていた。
  • 「少量の抗菌薬でも効いた」試験は小規模である。 Skidmore et al. (2003) は51人を無作為化し、6か月完遂は40人。要旨には企業の製剤名が記載されているが、資金提供の有無は要旨からは確認できなかった。菌数の測定は皮膚表面のものであり、毛包内の菌を見ているわけではない。また、この結果は「菌が無関係」を示すものではなく、抗菌薬の効果の一部が抗炎症作用で説明できることを示すにとどまる。Pollock et al. (2004) も10人の小規模研究で、表面の菌をスワブで測ったもの。
  • 治療比較のネットワークメタ解析の限界。 Huang et al. (2023) の順位は P スコアによるもので、本ページではイソトレチノインの具体的な差の比較対象を要旨から確定できなかったため数値を載せていない。Mavranezouli et al. (2022) では、組み入れ試験の質は中程度〜非常に低く、直接比較と間接比較の不整合もあった。同じ解析で、軽症〜中等症では、バイアス補正後に内服薬(抗菌薬など)は有効とは言えなかった。
  • イソトレチノインについて。 Cochrane レビュー(31試験、3,836人)では、内服抗菌薬+外用薬と比べて炎症性皮疹の減少に差は見られなかった(RR 1.01, 95% CI 0.96–1.06; 非常に低い質のエビデンス)一方、口唇・皮膚の乾燥などの副作用は多かった(RR 1.67, 95% CI 1.42–1.98)(Costa et al., 2018)。「いちばん効く」というネットワークメタ解析の結果とは、比べている相手と重症度が違う。また、イソトレチノインは日本の治療指針(Hayashi et al., 2018)の時点で国内では承認されていない薬であり、国内の標準治療には含まれない。本ページは使用を勧めるものではなく、「菌を狙わない治療で大きく改善する」ことを示す例として挙げている。Nelson et al. (2008) は7人の生検研究である。
  • 食事・体重・家族歴のデータは観察研究である。 Juhl et al. (2018) は14件の観察研究のメタ解析で、調整後の推定は弱まり、出版バイアスも検出されている。Heng & Chew (2020) も観察研究のまとめで、「約2.9倍」「約2.4倍」はニキビの有無または重症度に対するオッズ比(Juhl et al. の「約1.25倍」も同様)であり、リスクそのものの倍率ではない。同レビューでは、食事や喫煙との関連は研究間で一致しなかった。交絡(年齢、ホルモン状態、生活習慣など)を排除できない。Smith et al. (2007) の低グリセミック負荷食の無作為化試験は要旨を確認できず、効果量は原著未確認。
  • 耐性菌の頻度は時代と地域で大きく変わる。 1978年から1996年の報告をまとめた系統的レビューでは、アクネ菌の抗菌薬耐性の頻度は20%から62%に増えていた(Cooper, 1998)。より新しい系統的レビュー(Walsh et al., 2016)は要旨を確認できず、数値は原著未確認。Nakase et al. (2020) は日本の多施設研究だが、164株・164人の規模である。
  • 対象集団について。 菌の系統の研究は主に欧米の集団で行われており、日本人の皮膚の菌の構成に同じ関係が当てはまるかは確認できていない。治療試験の多くも10代後半〜20代が中心で、大人になってからのニキビに同じ比重で要因が効いているかは分からない。
  • 受診の目安について。 赤く腫れたニキビや膿をもったニキビが繰り返す、硬いしこりのようなニキビができる、跡(へこみや色素沈着)が残り始めた、市販薬を使っても数か月よくならない、といった場合は皮膚科で相談するのがよい。欧州のガイドラインは、十分な治療を早めに始めることで重い瘢痕を減らせることを治療の目的の一つに挙げている(Nast et al., 2012)。また、ニキビに似て見えて治療法が違う病気(酒さなど)もあり、見分けが必要とされている(Hayashi et al., 2018)。抗菌薬の塗り薬・飲み薬を自己判断で長く使い続けることは、耐性菌の点から勧められない。本ページは診断の代わりにはならない。

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参考文献

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