目にも「利き目」ってあるの?

健康 視力脳確度: 中〜高

一言でいうと...

はい、あります。ただし「何をもって利き目とするか」で、答えが変わります。 穴やすき間をのぞくときにいつも使うほうの目という意味なら、ほとんどの人にあり、およそ3人に2人は右目です。 一方で「見え方で勝っている目」という意味では、はっきりしない人も多く、検査の方法を変えると、利き目が反対側になる人が少なくありません。

詳しくは...

「利き目」には、じつは何種類かある

利き手は「字を書く手」でほぼ決まりますが、目の場合はそう単純ではありません。研究者は、少なくとも次のような意味を区別しています(Suttle et al., 2008)。

  • のぞく目(照準の利き目): カメラのファインダーや鍵穴、望遠鏡をのぞくとき、無意識に選んでいるほうの目。
  • 見え方の利き目: 視力やコントラスト(くっきり具合)の見え方で、勝っているほうの目。
  • ケンカに勝つ目: 左右の目にまったく違う絵を見せると、脳は2枚を混ぜられず、どちらか一方だけが見える状態が入れ替わりながら続きます。このとき、長く「勝って」見えているほうの目。

ふだん「利き目」と言われるのは、たいてい1つめの「のぞく目」です。

自分で確かめる方法

いちばんよく使われるのは、穴をあけたカードを使う方法です(「ホール・イン・カード法」と呼ばれます)。 両目を開けたまま、カードの穴から遠くの目印をのぞき、目印が穴の中に来るように合わせます。そのあと片目ずつ閉じると、片方の目では目印が穴の中に残り、もう片方では穴から外れます。穴の中に残ったほうが「のぞく目」です(方法の説明は Ehrenstein et al., 2005、Pointer, 2012)。

右目の人が多い

「のぞく目」で調べると、右目の人が多数派です。

  • 54の集団、合わせて5万4千人あまりのデータをまとめた分析では、左目の人はおよそ3人に1人(約37%)でした。男女で差は見られませんでした(Bourassa et al., 1996)。
  • 103人を調べた研究では右目が68%(Ehrenstein et al., 2005)、健康な若い大人72人では71%(Pointer, 2012)、老眼の年代の44人では70.5%(Lopes-Ferreira et al., 2013)。

左利きはおよそ10人に1人なので、利き目のほうが、左右の偏りがゆるやかだということになります。

利き手とは、つながっているけれど、ぴったりではない

利き手と利き目は同じ側になりやすいものの、けっこう食い違います。

さきほどの5万4千人の分析では、測り方に偏りのない研究だけで計算すると、右利きの人のうち約34%が左目、左利きの人のうち約57%が左目でした(Bourassa et al., 1996)。 つまり、左利きの人のほうが左目になりやすいけれど、右利きで左目という人も3人に1人くらいいるわけです。 同じ分析は、利き手を使う作業で利き目を測ると、同じ側に出やすくなってしまうという、測り方の落とし穴も指摘しています。

家族を調べた研究では、親の利き目と子どもの利き目に関係があり、左目の親が多いほど子どもも左目になりやすい傾向がありました。ただし、単純な遺伝のパターンでは説明できなかったとされています(Reiss & Reiss, 1997)。

ところが、測り方を変えると答えが変わる

ここからが本題です。「のぞく目」と「見え方の利き目」が同じとは限りません。

  • 健康な若い大人72人を2つの方法で調べた研究では、「のぞく目」は右が71%、「見え方」(片目にだけ度の入ったレンズを当てて、ぼやけが気になるほうを答えてもらう方法)では右が54%。1人ずつ見ると、2つの方法で利き目が一致したのは半分だけでした(Pointer, 2012)。コイン投げと変わらない一致率です。
  • アメリカの5つの眼科で326人を調べた研究では、41%の人で、カードの方法の利き目と、見え方で測った利き目が逆になりました(Pepose et al., 2025)。見え方ではっきり利き目があった人は半分ほどで、残りは「弱い利き目」か「左右ほぼ互角」でした。
  • 51人に9種類の検査をした研究では、どの2つの検査を比べても一致の度合いは低く、多くの検査で「どちらとも言えない」結果が目立ちました。著者らは、ほとんどの人ははっきりした利き目を持たず、左右の目のあいだでバランスを取り合っているのではないか、と述べています(Seijas et al., 2007)。
  • 視力・コントラスト・線のずれの見分け、の3種類で「見え方の利き目」を測った研究では、3つの結果どうしもそろわず、しかもほとんどの人で左右の差はごく小さかったと報告されています(Suttle et al., 2008)。

見る方向によっても入れ替わる

「のぞく目」自体も、じつは固定ではありません。 目の前の的に手を伸ばしてつかむ実験では、視線が正面から横に15度ほどずれただけで、使う目が左右入れ替わりました(Khan & Crawford, 2001)。右側を見るときは右目、左側を見るときは左目、という具合です。 別のチームが見え方の条件をそろえ直して確かめても、入れ替わりは同じように起きました(Carey & Hutchinson, 2013)。

こうした結果から、「利き目」という1つの性質があるという考え方そのものに疑問を投げかける専門家もいます。あるレビューは、「のぞく目」は片目で何かをするときに選ぶ目というだけで、ものの見え方において特別な役割を持っているとは言えないと主張しています(Mapp et al., 2003)。

それでも、同じ方法で測れば、けっこう安定している

「測るたびにバラバラ」というわけではありません。

  • 「のぞく目」は、質問紙で「どちらの目でのぞくか」を答えた結果とよく一致しました(Ehrenstein et al., 2005)。カードの方法は、「どちらとも言えない」結果が少ない検査でもありました(Seijas et al., 2007)。
  • 「ケンカに勝つ目」から計算した利き目の強さは、日を変えて測り直しても、よく再現されました(Acquafredda et al., 2023)。見え方の利き目を短時間で安定して測れる方法も比べられています(Bossi et al., 2018)。

つまり、1つの物差しで測った利き目は、それなりに確かに存在する。ただ、物差しどうしが同じものを測っていない、というのが実態に近そうです。

どこで役に立つのか

利き目がいちばん実用で問題になるのは、目の治療です。

  • 「モノビジョン」という方法があります。老眼の対策として、片目を遠く用、もう片目を近く用に合わせるやり方で、どちらの目をどちらに当てるかを決めるのに、利き目が使われています(Suttle et al., 2008)。 日本の病院で、白内障手術のときにこの方法を選んだ20人を調べた研究では、うまくなじめなかった人は、見え方の利き目が強い人たちでした(Handa et al., 2004)。9種類の検査の研究も、利き目がはっきりしている人はモノビジョンに向かない可能性を指摘しています(Seijas et al., 2007)。
  • 利き目は、目の状態が変わると入れ替わることもあります。 片目だけ白内障の手術を受けた94人では、手術の1か月後に、40%の人で利き目が反対側に変わっていました(Song et al., 2024)。
  • スポーツでもよく話題になります。14本の研究をまとめたレビューによると、利き手と利き目が逆側の人は一般には1〜3割とされる一方、ゴルフやサッカーなどでは5割前後の競技者が逆側でした。反対に、射撃やアーチェリーでは、上位の選手の8割あまりが同じ側でした(Moreno et al., 2022)。ただしレビュー自体が、研究が少なく、測り方もばらばらなので、慎重に受け取るべきと書いています。

まとめると

  • 「のぞくときにいつも使う目」という意味の利き目は、ほとんどの人にある。 およそ3人に2人は右目。
  • 利き手とは同じ側になりやすいが、右利きで左目の人も3人に1人くらいいる。
  • 「見え方で勝っている目」は、はっきりしない人が多い。 のぞく目と、見え方の利き目は、半分前後の人で食い違う。
  • 見る方向や、白内障の手術などで入れ替わることもある。
  • だから「利き目は右です」と言うときは、どの方法で測ったかまでがセットになる。

ただし...

  • 「利き目がある」の中身は定義に依存する。 照準の利き目(sighting dominance)が大多数の人で一方に決まることは、大規模なメタ分析と複数の標本で一貫している。一方、感覚の利き目(sensory dominance)は、測定法(+1.50D の雲霧法、コントラストのバランス点、両眼視野闘争、視力やコントラスト感度の左右差)ごとに結果が異なり、Suttle et al. (2008) では多くの人で左右差が有意でなかった。本ページの「はい」は前者の意味での肯定であり、後者を含めた単一の「利き目」の存在を肯定するものではない。
  • 右目優位の割合(約3分の2)は、主に欧米の標本による。 Bourassa et al. (1996) のメタ分析は54集団・54,087人だが、要旨からは対象国の内訳を確認できていない。日本人の大規模標本で照準の利き目の割合を調べた研究は、本サーベイでは確認できなかった。Reiss & Reiss (1997) の右目66.1%も、一つの地域の家族標本である。
  • 利き手と利き目の一致率は、測定法の偏りに強く影響される。 Bourassa et al. (1996) では、質問紙による研究で一致が2.69倍、片手・片目の動作課題で1.95倍、照準以外の方法で6.29倍大きく出ていた。本文の「右利きの約34%、左利きの約57%が左目」は、偏りが見られなかった研究群から、左利き9.25%・左目36.53%という集団を仮定して著者らが算出した値である。信頼区間は要旨からは取得できなかった。
  • Reiss & Reiss (1997) は家族研究で、遺伝と環境(家庭内の模倣など)を分離できるデザインではない。 親子の相関は遺伝の影響を示唆するが、双生児研究などによる遺伝率の推定は本サーベイでは確認していない。
  • 検査間の不一致を示した研究は、いずれも比較的小規模である。 Pointer (2012) は72人、Seijas et al. (2007) は51人、Suttle et al. (2008) は要旨から人数を取得できなかった。最大の Pepose et al. (2025) は326人だが、感覚の利き目を測ったのは頭部装着型の視覚シミュレーターという特定の装置である。「41%が不一致」はその装置での値であり、別の感覚検査で同じ割合になるとは限らない。
  • Khan & Crawford (2001) の「15.5°で入れ替わる」は、手を伸ばしてつかむ課題での平均値である。 Carey & Hutchinson (2013) は、手による遮蔽や像の大きさの差という交絡(Banks らの指摘)を統制しても入れ替わりが起きることを確かめたが、入れ替わる角度は使う手によって変わると報告している。日常の場面で照準の利き目がどの程度入れ替わっているかは、この実験からは分からない。
  • Mapp et al. (2003) は、みずから「やや論争的」と題したレビューである。 照準の利き目に固有の機能が無いという主張は、著者らの文献解釈であり、分野の合意とまでは言えない。
  • 検査の再現性の研究は、感覚の利き目の検査についてのもの。 Acquafredda et al. (2023) と Bossi et al. (2018) は両眼視野闘争やコントラスト極性の判断による感覚の利き目の再現性を示したもので、カードの方法(照準の利き目)を日や月をまたいで測り直した研究は、本サーベイでは要旨から確認できなかった。Bossi et al. (2018) の参加者は30人である。
  • モノビジョンの研究は小規模で、観察研究である。 Handa et al. (2004) は成功16人・不成功4人の比較で、不成功群が4人しかいない。Seijas et al. (2007) の「利き目がはっきりした人はモノビジョンに向かない」は、正視の被験者での検査結果からの著者らの推論で、手術成績を前向きに追ったものではない。モノビジョンの適否は眼科での評価に基づいて決まるもので、本ページの内容で判断できるものではない。
  • Song et al. (2024) は、中国の一施設で片眼の白内障手術を受けた94人の観察研究である。 利き目の判定は術前・術後ともカードの方法による。手術で見え方が大きく変わる状況での結果で、健康な人の利き目が時間とともに変わるかどうかを示したものではない。なお、利き目が入れ替わった人と入れ替わらなかった人で、見え方に関する生活の質に差は見られなかったと要旨にある。
  • スポーツのレビュー(Moreno et al., 2022)は14研究・2,759人の系統的レビューで、メタ分析ではない。 著者ら自身が、方法論上の偏り、利き目の評価法の不統一、研究数の少なさ、成績との関係の間接性を理由に、慎重な解釈を求めている。「逆側の人が一般に1〜3割」も先行研究の推定の幅であり、競技ごとの比率は各研究の標本による。利き目に合わせて競技のフォームを変えるべきかについて、本サーベイでは介入研究を確認していない。
  • Lopes-Ferreira et al. (2013) の2つの方法の一致は、要旨の分類(右右52.3%など)から「半分をやや超える程度」と読んだもので、左左の割合は要旨に明記されていない。 Pointer (2012) と同様、雲霧法とカードの方法の比較である。

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参考文献

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