肉ばかり食べていると老化が進む?
一言でいうと...
単純には「いいえ」。肉そのものが老化を直接進めるとは証明されていません。 ただし、加工肉や赤肉ばかりで、野菜・豆・全粒穀物が少ない食べ方は、健康に年を重ねるうえで不利になりそうです。
詳しくは...
まず、「老化が進む」には少なくとも二つの意味があります。一つは、細胞やDNAに現れる変化が実年齢より先に進むこと。もう一つは、がんや心臓病など、年齢とともに増える病気や早期死亡のリスクが高まることです。この二つは関係しますが、同じものではありません。
老化そのものを測った研究は、まだ決め手に欠ける
約1,000人の血液や頬の細胞を調べた研究では、肉を毎日食べる人ほど、DNAについた目印から計算する「生物学的な年齢」が速く進んでいる傾向がありました(Noroozi et al., 2024)。ただし、ある時点の食生活と体の状態を比べた研究なので、肉が原因だったとは断定できません。
米国先住民2,846人を調べた別の研究では、加工肉を多く食べる人ほど、染色体の端にある「テロメア」が短い傾向がありました。一方、加工していない赤肉では、はっきりした関係は見つかりませんでした(Fretts et al., 2016)。つまり、少なくとも今の証拠では、ハムやソーセージと、加工していない肉をひとまとめにはできません。
長期的な健康では、加工肉と赤肉の「食べすぎ」に注意
米国の男女81,469人を追跡した研究では、赤肉を8年間で1日0.5食分以上増やした人は、その後8年間の死亡率が10%高いという関連がありました。加工肉では13%、加工していない赤肉では9%でした(Zheng et al., 2019)。これは「100人中10人余計に亡くなる」という意味ではなく、もともとの死亡率に対する相対的な差です。
加工肉については、大腸がんとの関連も繰り返し報告されています。国際がん研究機関が800件以上の研究を評価した報告では、加工肉を1日50g多く食べることと大腸がんのリスクが18%高いことが関連していました(Bouvard et al., 2015)。一方、加工していない赤肉と病気の関係をまとめた別の解析では、関連があっても証拠は弱く、不確かさが大きいと評価されています(Lescinsky et al., 2022)。
「肉を何に置き換えるか」が大事
肉をただ減らせばよい、という話でもありません。前向き研究をまとめた解析では、赤肉の一部をナッツや全粒穀物に、加工肉の一部をナッツや豆に置き換えた場合、死亡率が低いことと関連していました(Neuenschwander et al., 2023)。ただし、これは置き換えを実際に割り当てた実験ではなく、食事記録から計算した結果です。
36件、計1,803人の比較試験をまとめると、赤肉とさまざまな比較食を一括して比べた場合、血圧や多くの血中脂質に明確な差はありませんでした。しかし、良質な植物性たんぱく質と比べると、赤肉を食べた場合はLDLコレステロールの低下が約0.20 mmol/L小さくなりました(Guasch-Ferré et al., 2019)。ここでも、結果は「肉かゼロか」より「代わりに何を食べるか」で変わります。
現実的には、ハム・ソーセージ・ベーコンを毎日の中心にせず、牛肉や豚肉だけに偏らないこと。魚、卵、大豆や豆類も組み合わせ、野菜や海藻、全粒穀物を押しのけないことが大切です。肉はたんぱく質などをとれる食品なので、全面的に避ける必要はありません。農林水産省の「食事バランスガイド」も、肉だけでなく魚・卵・大豆料理を主菜として組み合わせ、副菜から野菜などをとる形を示しています。
ただし...
肉の多い食事を何十年も無作為に割り当て、「老化」や死亡まで追った試験はありません。長期的な結論の中心は観察研究であり、肉を多く食べる人と少なく食べる人では、喫煙、運動、所得、ほかの食事なども違う可能性があります。解析で調整しても、こうした交絡は残りえます。
テロメアやDNAから計算する年齢は老化の一面を映す指標ですが、短い・高いからといって、その人が早く老いると決まるわけではありません。Frettsらの研究は米国先住民が対象で、日本の一般集団にそのまま当てはまるとは限りません。Norooziらの研究も、肉の種類や量を細かく分けた介入試験ではありません。
また、「加工肉は発がん性がある」という分類は、害が起きる証拠の確かさを示すもので、たばこと同じ大きさの危険があるという意味ではありません。肉の種類、量、調理法、そして何を代わりに食べるかで結果は変わります。
高齢者や食が細い人が、理由なく肉やほかのたんぱく源を大きく減らすと、必要な栄養をとりにくくなることもあります。持病がある、体重が意図せず減っているなどの場合は、自己判断で極端に制限せず、医師や管理栄養士に相談してください。
以上から、このページの確信度は「中」です。肉中心の食生活と好ましくない健康結果との関連は比較的一貫していますが、「肉が老化を直接速める」という因果関係までは示されていません。
参考文献
- Noroozi, R., et al. (2024). Analysis of epigenetic clocks links yoga, sleep, education, reduced meat intake, coffee, and a SOCS2 gene variant to slower epigenetic aging. GeroScience, 46, 2583–2604. https://doi.org/10.1007/s11357-023-01029-4
- Fretts, A. M., et al. (2016). Processed Meat, but Not Unprocessed Red Meat, Is Inversely Associated with Leukocyte Telomere Length in the Strong Heart Family Study. The Journal of Nutrition, 146(10), 2013–2018. https://doi.org/10.3945/jn.116.234922
- Zheng, Y., et al. (2019). Association of changes in red meat consumption with total and cause specific mortality among US women and men: two prospective cohort studies. BMJ, 365, l2110. https://doi.org/10.1136/bmj.l2110
- Bouvard, V., et al. (2015). Carcinogenicity of consumption of red and processed meat. The Lancet Oncology, 16(16), 1599–1600. https://doi.org/10.1016/S1470-2045(15)00444-1
- Lescinsky, H., et al. (2022). Health effects associated with consumption of unprocessed red meat: a Burden of Proof study. Nature Medicine, 28, 2075–2082. https://doi.org/10.1038/s41591-022-01968-z
- Neuenschwander, M., et al. (2023). Substitution of animal-based with plant-based foods on cardiometabolic health and all-cause mortality: a systematic review and meta-analysis of prospective studies. BMC Medicine, 21, 404. https://doi.org/10.1186/s12916-023-03093-1
- Guasch-Ferré, M., et al. (2019). Meta-Analysis of Randomized Controlled Trials of Red Meat Consumption in Comparison With Various Comparison Diets on Cardiovascular Risk Factors. Circulation, 139(15), 1828–1845. https://doi.org/10.1161/CIRCULATIONAHA.118.035225
- 農林水産省. 食事バランスガイドについて. https://www.maff.go.jp/j/syokuiku/minna_navi/about/