つい悪さ自慢しちゃうのって、俺だけ?

ライフスタイル 心理お酒SNS確度: 中

一言でいうと...

俺だけ、ではなさそうです。 若い人のSNSを調べた研究では、半数を超えるプロフィールに飲酒や性、暴力といった「危ない話」が載っていました。やってもいないことを「盛る」人は少数派ですが、10代前半の男子で目立つという結果があります。 ただし「悪さ自慢をする人がどれくらいいるか」を直接数えた研究は見つかりませんでした。

詳しくは...

「悪さ自慢」そのものを数えた研究はない

最初に正直に書いておくと、「友だちとの会話で、どれくらいの人が悪さを自慢しているか」を数えた研究は、今回の文献検索では見つかりませんでした。

そこで、手がかりになる研究を3種類集めました。

  1. SNSに「悪さ」を載せている人はどれくらいいるか
  2. やってもいない悪さを「やった」と答える人はどれくらいいるか
  3. 男性は盛りがちなのか

手がかり1: SNSには「危ない話」がふつうに載っている

2007年、アメリカのSNS(MySpace)で「18歳」と名乗る人の公開プロフィールを500件、無作為に選んで中身を調べた研究があります。

  • 飲酒・喫煙・薬物・性・暴力のどれかが載っていたのは54%(270件)
  • 飲酒・喫煙・薬物の話は41%、性の話は24%、暴力の話は14.4%

Moreno et al., 2009)。 アメリカでは飲酒は21歳からなので、18歳の飲酒の話はそれ自体が「悪さ」の話です。

では、載せている話はただの見栄なのか。19本の研究をまとめて計算し直した研究によると、SNSでお酒の投稿によく関わる(投稿する、いいねする、見る)人ほど、実際にたくさん飲み、お酒のトラブルも多いという関連が出ていました (相関の強さを0〜1で表すと、飲む量とは0.36、トラブルとは0.37Curtis et al., 2018)。 少なくとも、お酒の話を載せている人の多くは、実際によく飲んでいる人だということになります。

手がかり2: 「やってないのに、やった」と言う人は少数

アンケートに実在しない薬物の名前をこっそり混ぜておく、という調べ方があります。「使ったことがある」と答えた人は、少なくともその項目では本当のことを言っていません。

ノルウェーの13〜19歳、11,928人の調査では、架空の薬物を使ったことがあると答えた人が0.5%いました。 面白いのは、この人たちを外して計算し直すと、「男子のほうが強い薬物を使っている」という差が消えてしまったことです (Pape & Storvoll, 2006)。 外すと男女差が消えたということは、盛る側に男子が多かったと考えられます。盛る人はごく一部だが、集計を動かすほどの影響がある、ということです。

「盛った」と自分から認める人の割合を調べた研究もあります。都市部の中高生3,144人に、性に関する質問にどれくらい正直に答えたかを尋ねると、中学生男子の14%が「実際より多めに答えた」と認め、これがいちばん盛りがちなグループでした。逆に中学生女子の8%は「実際より少なめに答えた」そうです(Siegel et al., 1998)。

手がかり3: 人の目があるほど、男性は「盛る」

「俺だけ?」の「俺」の部分です。性に関する質問に、3つの条件で答えてもらった実験があります。

  • うそ発見器につながれている(と思わされている)とき → 男女差はほとんどなかった
  • 完全に匿名のとき → 男女差は中くらい
  • 実験者に回答を見られるかもしれないとき → 男女差がいちばん大きかった

Alexander & Fisher, 2003)。 人の目があるほど、男女それぞれ「らしい」答えに寄っていくわけです。

なぜ「悪さ」が自慢のネタになるのか

ここからは「なぜ」の側です。悪さを見せることには、それなりの見返りがあるようです。

ルールを破る人は「力がある」ように見える。 人の缶コーヒーを勝手に飲む、床にタバコの灰を落とす、机に足を乗せる。こうした人は、そうしない人より力を持っているように見られた、という4つの実験があります。「ルールに縛られずに好きにできる人」に見えるからです (Van Kleef et al., 2011)。

人気者ほど、軽い悪さを増やしていく。 13〜14歳の185人を追った研究では、人気のある子ほどその後、少しの薬物使用や軽い非行といった、仲間内で認められやすいふるまいを増やしていきましたAllen et al., 2005)。

ただ、自慢は思ったほどウケていない

見返りには条件がつきます。

  • 19か国の2,369人に、ルールを破る人・守る人の場面を読んでもらった研究では、個人主義的な文化ではルールを破る人が力強く見られた一方、集団の和を重んじる文化では逆に弱く見られ、怒りを買いやすかったStamkou et al., 2019)。
  • 13歳から23歳まで184人を追った研究では、10代前半に背伸びした悪さをしていた子は、その時点では仲間内でうまくいっていたものの、のちに親しい人との関係のつまずき、お酒や薬物の問題、犯罪が多かったAllen et al., 2014)。
  • そもそも自慢する側は、相手の反応を読み違えがちです。3つの実験で、自慢する人は相手が一緒に喜んでくれる度合いを大きく、イラッとする度合いを小さく見積もり、結果として好感度を下げていました (Scopelliti et al., 2015。題材は悪さではなく、成功や長所の自慢)。

まとめると

  • 悪さを人に見せること自体は珍しくない。 若い人のSNSでは、半数を超えるプロフィールに飲酒や性、暴力の話が載っていた。
  • まるごと作り話をする人は少数。 ただし少数の「盛る人」は、男子、特に10代前半で目立つ。人の目があるほど、男性は盛る方向に寄る。
  • 悪さを見せると「力がある」と見られることがあり、それが自慢したくなる理由の説明になる。 ただし好かれるとは限らず、文化によっては逆効果になる。
  • だから答えは「俺だけではない。ただし、盛りがちなのは若い男性のほう、という結果がある」。 ただし、会話の中の悪さ自慢を直接数えた研究はなく、ここに書いたのはSNSの中身やアンケートの答え方から組み立てた話です。

ただし...

  • 本サーベイでは、会話や飲み会での「悪さ自慢」の頻度を直接測った研究を見つけられなかった。 本ページの結論は、SNS上の危険行動の表示(Moreno et al., 2009)、調査での過大申告(Pape & Storvoll, 2006; Siegel et al., 1998)、性行動申告の男女差(Alexander & Fisher, 2003)という別の現象からの組み立てである。SNSに載っていることと「自慢している」ことは同じではない(他人に投稿・タグ付けされたものも含まれうる)。
  • SNS研究のデータが古い。 Moreno et al. (2009) は2007年のMySpaceの公開プロフィールのみが対象で、年齢も自己申告である。いまの若者の主な場(短尺動画、限定公開の投稿、消える投稿など)とは違う。
  • Curtis et al. (2018) は相関のメタ分析である。 飲酒量との r = 0.36(95%信頼区間 0.29–0.44)、飲酒問題との r = 0.37(0.21–0.51)で、研究間の異質性が大きい。「飲む人が投稿する」のか「投稿が飲酒を促す」のか、第三の要因なのかは分けられない。また、投稿と飲酒量が関連していても、個々の投稿が誇張でないことまでは示さない。
  • 架空薬物の項目は「自慢」を測るものではない。 匿名の調査票に聞き手はおらず、架空薬物への「使った」という回答は、ふざけ、読み違い、名前の似た薬との混同なども含みうる。「盛る側に男子が多かった」は、除外で男女差が消えたという結果からの推論である。
  • Siegel et al. (1998) は自己申告の「正直さ」である。 「多めに答えた」と認めた14%は、認めた人の割合であって、実際に盛った人の割合ではない。対象は都市部の、マイノリティが多数を占める学校の生徒である。
  • 男女差は「男性の誇張」だけでは説明できない。 Alexander & Fisher (2003) で差が縮んだのが男性の申告が減ったためか女性の申告が増えたためかは、本サーベイでは確認できていない。Siegel et al. (1998) でも中学生女子の過少申告(8%)が並んで出ている。「男は盛る」と同じくらい「女は控えめに言う」可能性がある。
  • 「なぜ」の側の実験は、特定の場面での結果である。 Van Kleef et al. (2011) はシナリオ・映像・対面の実験で、悪さの自慢を題材にしたものではなく、大規模な追試は本サーベイでは見つからなかった。Stamkou et al. (2019) は、集団主義的な文化ではルール違反者がむしろ力を低く見られることを示しており、「ルール破りは力のシグナルになる」という説明は文化によって逆転しうる。日本がこの19か国に含まれるか、どちら側に位置づくかは本サーベイでは確認できていない。
  • 縦断研究は小規模で、交絡を排除できない。 Allen et al. (2005) は185人、Allen et al. (2014) は184人のアメリカの地域標本で、観察研究である。人気と非行の関係には、家庭環境や成熟の早さなどの第三の要因が入りうる。
  • Scopelliti et al. (2015) の題材は成功や長所の自慢である。 悪さの自慢にも同じ読み違いが起きるかは検証されていない。
  • 対象集団が偏っている。 ここで引いた研究はアメリカとノルウェーが中心で、日本での悪さ自慢や規範違反者の見え方を調べたデータは本サーベイでは見つからなかった。

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ChatGPT Grok Claude

参考文献

  • Moreno, M. A., Parks, M. R., Zimmerman, F. J., Brito, T. E., & Christakis, D. A. (2009). Display of health risk behaviors on MySpace by adolescents. Archives of Pediatrics & Adolescent Medicine. https://doi.org/10.1001/archpediatrics.2008.528
  • Curtis, B. L., Lookatch, S. J., Ramo, D. E., McKay, J. R., Feinn, R. S., & Kranzler, H. R. (2018). Meta-analysis of the association of alcohol-related social media use with alcohol consumption and alcohol-related problems in adolescents and young adults. Alcoholism: Clinical and Experimental Research. https://doi.org/10.1111/acer.13642
  • Pape, H., & Storvoll, E. E. (2006). Teenagers' reported use of fictitious drugs: A study of false positives. Nordic Studies on Alcohol and Drugs. https://doi.org/10.1177/1455072506023002-315
  • Siegel, D. M., Aten, M. J., & Roghmann, K. J. (1998). Self-reported honesty among middle and high school students responding to a sexual behavior questionnaire. Journal of Adolescent Health. https://doi.org/10.1016/s1054-139x(97)00274-7
  • Alexander, M. G., & Fisher, T. D. (2003). Truth and consequences: Using the bogus pipeline to examine sex differences in self-reported sexuality. The Journal of Sex Research. https://doi.org/10.1080/00224490309552164
  • Van Kleef, G. A., Homan, A. C., Finkenauer, C., Gündemir, S., & Stamkou, E. (2011). Breaking the rules to rise to power. Social Psychological and Personality Science. https://doi.org/10.1177/1948550611398416
  • Allen, J. P., Porter, M. R., McFarland, F. C., Marsh, P., & McElhaney, K. B. (2005). The two faces of adolescents' success with peers: Adolescent popularity, social adaptation, and deviant behavior. Child Development. https://doi.org/10.1111/j.1467-8624.2005.00875.x
  • Stamkou, E., van Kleef, G. A., Homan, A. C., Gelfand, M. J., et al. (2019). Cultural collectivism and tightness moderate responses to norm violators: Effects on power perception, moral emotions, and leader support. Personality and Social Psychology Bulletin. https://doi.org/10.1177/0146167218802832
  • Allen, J. P., Schad, M. M., Oudekerk, B., & Chango, J. (2014). What ever happened to the "cool" kids? Long-term sequelae of early adolescent pseudomature behavior. Child Development. https://doi.org/10.1111/cdev.12250
  • Scopelliti, I., Loewenstein, G., & Vosgerau, J. (2015). You call it "self-exuberance"; I call it "bragging." Psychological Science. https://doi.org/10.1177/0956797615573516