音楽を聴きながら勉強するのはダメなこと?

勉強 習慣心理音楽確度: 中

一言でいうと...

ダメとまでは言えませんが、読む・暗記する勉強なら歌詞つきは避けたほうがよさそうです。 歌詞つきの音楽は、記憶や読解を少し下げる結果が繰り返し出ています。 歌詞なしの音楽は害が小さそうですが、静かなときより成績を上げる確かな根拠は、今のところありません。

詳しくは...

まず、「音楽は勉強の味方か」の平均点が割れている

この問いがややこしいのは、研究をまとめても答えが一方向にそろわないからです。

2011年のメタ解析は、背景音楽の効果を全体でならすとほぼゼロと報告しました。ただし中身を分けると、 読解にはじゃまになり、記憶には小さなマイナスが見えました (Kämpfe et al., 2011)。

一方、2023年の別のメタ解析は、47件の研究から71個の結果を集め、背景音楽がある条件に 小さなプラス(d = 0.314)を見つけています (de la Mora Velasco et al., 2023)。

反対の結論が出るのは、ひとくちに「勉強」といっても、単語を覚える、文章を読む、計算する、 授業の映像を見る、という作業が混ざっているからです。音楽もクラシック、ポップス、本人が選んだ曲など、 条件がばらばらです。「音楽をかければ集中できる」も「かけたら必ずダメ」も、研究全体は支えていません。

歌詞は、読んだり覚えたりする作業とぶつかりやすい

ここで比較的一貫しているのが歌詞です。文章を読むときに背景音楽を流す研究をまとめた解析では、 音楽ありの成績は無音より小さく下がりました(Hedgesの g = −0.19)。 特に歌詞つきのほうが、歌詞なしより下がり方が大きいという結果でした (Vasilev et al., 2018)。

2023年には、大学生に無音・歌詞なしのローファイ・歌詞つきの音楽のもとで、 単語の記憶、図形の記憶、読解、計算をしてもらった実験もあります。 歌詞つきでは、単語の記憶、図形の記憶、読解が無音よりおよそ d = −0.3低くなりました。 歌詞なしのローファイでは、良くも悪くもはっきりした差が出ませんでした (Souza & Barbosa, 2023)。

単語を覚える場面では、もっと直接的な実験があります。外国語の単語を覚えてもらうと、 背景の歌が参加者にとってなじみのある言葉だった条件では、無音や知らない言葉の歌より、 その場と直後のテストが悪くなりました。ただし1週間後には差が消えていました (de Groot & Smedinga, 2014)。

歌詞は、ただの「気になる音」ではなく、意味を持つ言葉です。読んでいる文や覚えようとしている単語と、 頭の中の置き場を取り合う、と考えるとこの結果はわかりやすいです。とはいえ、これは仕組みの説明であって、 歌詞を聴くと必ず記憶が壊れるという意味ではありません。

好きな曲なら平気、とは限らない

好きな曲ならやる気が出るし、集中しやすいと感じる人は多いはずです。けれど、好き嫌いが成績の差を 帳消しにするかは別の話です。

無音・好きな音楽・嫌いな音楽のもとで、順番どおりに数字を覚える課題を比べた実験では、 好き嫌いにかかわらず、音楽ありの成績は無音より低くなりました (Perham & Vizard, 2011)。

もちろん、気分を整える、周囲の会話が気にならなくなる、といった助けはありえます。 ただ、「好きだから学習成績も上がる」とまでは言えない、ということです。

歌詞なしなら、積極的におすすめできる?

そこまでは言えません。歌詞なしのほうが安全そう、という結果はありますが、 無音を上回る強い結果は出ていません。

75人を5条件に分け、速さや調和の違う歌詞なしの曲、または雑音を流しながら、 意味のある/ない単語を覚えてもらった実験では、どの音の条件でも学習成績に一貫した差は出ませんでした (Jäncke & Sandmann, 2010)。

別の実験では、大学生81人がポップスあり/無音で図入りの文章を学びました。全体としては、 覚えた量に差はありませんでした。ただし、作業中に頭へ置いておける量が少ない参加者では、 文章を理解する成績が無音のほうで高くなりました (Lehmann & Seufert, 2017)。

つまり、歌詞なしなら誰にでも効く「集中用の道具」というより、少なくとも大きく邪魔をしない人もいる、 くらいに受け取るのが無難です。

結局どうすればいい?

  • テスト前や、読む・書く・暗記する勉強で成果を優先するなら、まず無音が基準になります。
  • 音楽がほしいなら、歌詞なしを選ぶほうが、歌詞つきより不利になりにくそうです。
  • 歌詞なしだから成績が上がる、と期待する理由はまだありません。勉強を始めやすくなる、周りの音が気にならなくなる、といった自分の目的に合うかで使うのがよさそうです。
  • どうしても好きな歌を聴きたいなら、単純な作業や休憩に回し、新しい文章を理解したり単語を覚えたりする時間とは分けると、研究で見えるリスクを避けやすくなります。

ただし...

  • 研究ごとの結果は本当に割れている。 2011年のメタ解析が全体でほぼゼロ、2023年のメタ解析が小さなプラスとしたように、音楽の種類、音量、課題、参加者の年齢、学習とテストの間隔をそろえない平均には限界がある。本ページの結論は、特に歌詞つきと読解・記憶の組み合わせに絞ったものです。
  • 効果が小さい。 読解のメタ解析の g = −0.19 や Souza & Barbosa (2023) のおよそ d = −0.3 は、平均すると小さい差である。1回音楽を流しただけで、成績が目に見えて下がるとは限らない。
  • 実験室やオンラインの短い課題が中心。 単語リスト、短い文章、計算を数十分する実験を、何週間も続く受験勉強や実際の試験の点数へ、そのまま広げることはできない。外国語単語の実験で1週間後には差が消えたことも、この限界を示している。
  • 歌詞つきと歌詞なしの比較は、歌詞だけを変えられていないことがある。 曲調、テンポ、なじみ、好み、音量まで同時に違うため、「言葉があること」だけが原因だと断定はできない。Souza & Barbosa (2023) もこの点を限界としている。
  • 日本語での直接の検証は乏しい。 引用した実験の参加者は欧州の大学生が中心で、音楽もポルトガル語、英語などだった。日本語の歌詞と日本語の勉強で同じ大きさの差が出るかは、直接には確かめられていない。
  • 自分で選んだ曲についての証拠は少ない。 Perham & Vizard (2011) は好みで差が消えなかったが、順番の記憶という限定された課題である。「自分で選ぶ音楽は常に悪い/良い」とは結論づけられない。

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ChatGPT Grok Claude

参考文献

  • Kämpfe, J., Sedlmeier, P., & Renkewitz, F. (2011). The impact of background music on adult listeners: A meta-analysis. Psychology of Music, 39(4), 424–448. https://doi.org/10.1177/0305735610376261
  • de la Mora Velasco, E., Chen, Y.-T., Hirumi, A., & Bai, H. (2023). The impact of background music on learners: A systematic review and meta-analysis. Psychology of Music, 51(6), 1598–1626. https://doi.org/10.1177/03057356231153070
  • Vasilev, M. R., Kirkby, J. A., & Angele, B. (2018). Auditory distraction during reading: A Bayesian meta-analysis of a continuing controversy. Perspectives on Psychological Science, 13(5), 567–597. https://doi.org/10.1177/1745691617747398
  • Souza, A. S., & Barbosa, L. A. F. (2023). Should we turn off the music? Music with lyrics interferes with cognitive tasks. Journal of Cognition, 6(1), 24. https://doi.org/10.5334/joc.273
  • de Groot, A. M. B., & Smedinga, H. E. (2014). Let the music play! Studies in Second Language Acquisition, 36(4), 681–707. https://doi.org/10.1017/S0272263114000059
  • Perham, N., & Vizard, J. (2011). Can preference for background music mediate the irrelevant sound effect? Applied Cognitive Psychology, 25(4), 625–631. https://doi.org/10.1002/acp.1731
  • Jäncke, L., & Sandmann, P. (2010). Music listening while you learn: No influence of background music on verbal learning. Behavioral and Brain Functions, 6, 3. https://doi.org/10.1186/1744-9081-6-3
  • Lehmann, J. A. M., & Seufert, T. (2017). The influence of background music on learning in the light of different theoretical perspectives and the role of working memory capacity. Frontiers in Psychology, 8, 1902. https://doi.org/10.3389/fpsyg.2017.01902