寝る前には部屋を暗くしたほうがいいの?

健康 健康睡眠習慣確度: 中〜高

一言でいうと...

暗くしたほうがいい、という方向で証拠はそろっています。 寝る前の部屋の明るさは眠りの準備を後ろにずらし、眠っている間の光も、心臓の動きや翌朝の体の反応に影響していました。 ただし真っ暗が誰にとっても正解ではありません。足元が見えないほうが危ない場面もあります。

詳しくは...

寝る前の「ふつうの部屋の明るさ」で、眠りの準備が遅れる

体には、暗くなると「そろそろ眠る時間だ」という信号を出す仕組みがあります。 この信号を出す物質は、目に光が入ると出方が抑えられます。

18〜30歳の116人を研究施設に5日以上泊めて調べた研究があります。 就寝前の8時間を、ふつうの室内の明るさ(200ルクス未満)で過ごす場合と、 ろうそくの灯りほどの薄暗さ(3ルクス未満)で過ごす場合で比べたところ、

  • 室内の明るさで過ごすと、99.0%の人で「眠る時間だ」の信号の出はじめが遅れました。
  • その信号が出ている時間そのものも、約90分短くなりました。 (Gooley et al., 2011

ここで言う「200ルクス未満」は、特別に明るい部屋ではありません。 ごくふつうのリビングや寝室の照明です。特別なことをしなくても、 夜に明かりの下で過ごしているだけで、眠りの準備は後ろにずれています。

眠っている間の光も、体は感じている

明かりを消し忘れて寝てしまった夜。眠ってしまえば同じ、とはいかないようです。

健康な成人を対象に、眠っている間だけ部屋の明るさを変えた実験室の研究があります。 薄暗い環境(3ルクス未満)で寝た場合とくらべ、中くらいの明るさ(100ルクス)で寝ると、

  • 夜のあいだの心拍数が上がり、心臓の拍動のゆらぎが小さくなりました。 これは体が休息モードに入りきっていない、緊張側に寄っているサインです。
  • 翌朝、血糖を下げるホルモンの効きが悪くなっていました。Mason et al., 2022

100ルクスというのは、豆電球よりは明るく、部屋の照明よりは暗いくらい。 テレビをつけっぱなしにした部屋や、カーテンの隙間から街灯が入る部屋で ありえない明るさではありません。

実際の寝室を測って、その後を追いかけた調査

実験室ではなく、ふだんの寝室の明るさをそのまま測って、 その後どうなるかを追いかけた調査もあります。

奈良で行われた高齢者の調査では、調査開始時に気分の落ち込みが見られなかった863人 (平均71.5歳)の寝室の明るさを実測し、中央値で2年ほど追跡しました。 その間に73人に気分の落ち込みが現れました。

  • 寝室の明るさが平均5ルクス未満の「暗い」グループ(710人)とくらべ、 5ルクス以上のグループ(153人)では、発症する割合が1.89倍(95%の確からしさの範囲で1.13〜3.14倍)。
  • 高血圧・糖尿病・睡眠の状態を考慮に入れて計算し直しても1.72倍(1.03〜2.89倍)と、 傾向は残りました。(Obayashi et al., 2018

アメリカでも、63〜84歳の552人が7日間、腕に測定器をつけて光を記録した調査があります。 夜間に光を浴びていた人は、肥満が1.82倍(1.26〜2.65倍)、糖尿病が2.00倍(1.19〜3.43倍)、 高血圧が1.74倍(1.21〜2.52倍)多く見られました (Kim et al., 2022)。 ただしこちらはある一時点で調べたものなので、光のせいでそうなったとは言い切れません。

目安はどれくらい?

専門家が集まって作った推奨があります(Brown et al., 2022)。 目のあたりで測った明るさとして、

時間帯 目安
日中 250ルクス以上(明るいほうがよい)
夕方(少なくとも寝る3時間前から) 10ルクスまで
眠っている間 できるだけ暗く、最大でも1ルクス
夜中に何か見る必要があるとき 10ルクスまで

眠っている間の「1ルクスまで」はかなり厳しい数字で、 豆電球をつけたまま寝るのは、この目安からは外れます。 一方で日中は「明るいほど良い」側。昼に外に出て、夜に照明を落とす——という 一日のメリハリが推奨の骨子です。

結局どうすればいいか

  • 夜は部屋全体の照明を落とし、手元だけを照らす。 寝る3時間前あたりから。
  • 寝るときは、できるだけ暗くする。 遮光カーテン、家電の光を隠す、豆電球を消す。
  • ただし、暗さが危ない場面では優先順位を変える。 夜中にトイレに立つときにつまずくくらいなら、 足元灯をつけたほうが安全です。推奨のほうも「夜間に見る必要があるなら10ルクスまで」と 例外を置いています。転ばないことのほうが、たいてい大事です。

ただし...

  • Obayashi et al. (2018) と Kim et al. (2022) は観察研究であり、因果を示さない。 暗い寝室で寝る人と明るい寝室で寝る人には、生活習慣・住環境・経済状況・ もともとの健康状態など、光以外の違いがありうる。統計的な調整で消せるのは 測定した交絡因子だけである。
  • 逆の因果も否定できない。 気分が落ち込んでいる人や体調の悪い人ほど、 不安や夜間の起き上がりのために明かりをつけて寝る、という向きの説明も成り立つ。 Kim et al. は横断研究であり、時間の前後関係すら特定できない。
  • どちらも高齢者コホートである(平均71.5歳/63–84歳)。 加齢による水晶体の黄変や睡眠構造の変化を考えると、若年成人や小児への外挿には慎重であるべき。 日本の高齢者集団(HEIJO-KYO)の結果を、住環境の異なる集団にそのまま当てはめることもできない。
  • Gooley et al. (2011) が扱ったのは就寝「前」の室内光であり、睡眠「中」の光とは別の曝露である。 メラトニン分泌のタイミングと持続時間への影響を示したもので、 長期的な健康アウトカムを測ってはいない。また後ろ向き解析である。
  • Mason et al. (2022) は実験室での短期介入で、対象人数も少ない。 一晩の曝露が心拍・心拍変動・翌朝のインスリン抵抗性に与えた変化を示したもので、 この変化が長期に続くか、疾患の発症につながるかは検証されていない。 要旨で示されているのは方向性であり、本ページでは効果量を記載していない。
  • Brown et al. (2022) は専門家の合意にもとづく推奨であり、一次データの効果量ではない。 推奨値はメラノピック等価昼光照度(melanopic EDI)という、光の波長構成を考慮した指標で 定義されている。家庭の照度計やスマートフォンのアプリで測るルクスとは一致しない。 本文では読みやすさのため「ルクス」と書いたが、厳密には同じ単位ではない。
  • 真っ暗が万人に最適とは限らない。 高齢者の夜間転倒、暗所への恐怖がある子ども、 防犯上の事情など、明かりを残す理由が光の生理的影響を上回る場面はある。 推奨自身が夜間作業について10ルクスまでの例外を置いている。 本ページの研究群は、いずれもこうしたトレードオフを評価していない。

続きをAIと語る

この記事を渡して、そのまま話を続けられます。

ChatGPT Grok Claude

参考文献

  • Gooley, J. J., Chamberlain, K., Smith, K. A., Khalsa, S. B. S., Rajaratnam, S. M. W., Van Reen, E., Zeitzer, J. M., Czeisler, C. A., & Lockley, S. W. (2011). Exposure to room light before bedtime suppresses melatonin onset and shortens melatonin duration in humans. The Journal of Clinical Endocrinology & Metabolism, 96(3), E463–E472. https://doi.org/10.1210/jc.2010-2098
  • Mason, I. C., Grimaldi, D., Reid, K. J., Warlick, C., Malkani, R. G., Abbott, S. M., & Zee, P. C. (2022). Light exposure during sleep impairs cardiometabolic function. Proceedings of the National Academy of Sciences, 119(12), e2113290119. https://doi.org/10.1073/pnas.2113290119
  • Obayashi, K., Saeki, K., Kurumatani, N., et al. (2018). Bedroom light exposure at night and the incidence of depressive symptoms: a longitudinal study of the HEIJO-KYO cohort. American Journal of Epidemiology, 187(3), 427–434. https://doi.org/10.1093/aje/kwx290
  • Kim, M., Vu, T.-H. T., Maas, M. B., Braun, R., Wolf, M. S., Roenneberg, T., Daviglus, M. L., Reid, K. J., & Zee, P. C. (2022). Light at night in older age is associated with obesity, diabetes, and hypertension. SLEEP, zsac130. https://doi.org/10.1093/sleep/zsac130
  • Brown, T. M., Brainard, G. C., Cajochen, C., et al. (2022). Recommendations for daytime, evening, and nighttime indoor light exposure to best support physiology, sleep, and wakefulness in healthy adults. PLoS Biology, 20(3), e3001571. https://doi.org/10.1371/journal.pbio.3001571