未成年の飲酒って体に悪いの?
一言でいうと...
そもそも法律で禁じられていますが、体にもちゃんと悪影響があるようです。
脳がまだ育っている時期に飲むと、その育ち方が変わってしまう。そういう報告が積み上がっています。 逆に、体にいいことが起きるという報告のほうは見当たりません。
詳しくは...
影響の話の前に、これは法律の話
20歳未満の飲酒は「体に悪いかどうか」で決まっている話ではありません。 法律が正面から禁じています。
条文はこう書いてあります。
二十歳未満ノ者ハ酒類ヲ飲用スルコトヲ得ス
(二十歳未満ノ者ノ飲酒ノ禁止ニ関スル法律、大正十一年法律第二十号)
大正時代の法律なので、片仮名のままです。2022年に成人年齢が18歳に下がったときも 飲酒は20歳のままで、法律の名前のほうが「未成年者飲酒禁止法」から変わりました。
条文を読むと、罰を受けるのは飲んだ本人ではありません。 罰則が向いているのは2方向です。
| 誰 | 何を | 罰 |
|---|---|---|
| 親権者・監督する人 | 飲酒を知りながら止めなかった | 科料 |
| 酒を売る・出す側 | 20歳未満が飲むと知って売った・出した | 50万円以下の罰金 |
つまりこの法律は、本人を責めるためではなく、まわりの大人に止めさせるために作られています。 飲む本人に罰が無いことは、「だから大丈夫」ではなく、責任の置き場所の話です。
厚生労働省のガイドラインも、20歳未満の飲酒を「法律違反に当たる場合等」として真っ先に挙げ、 「脳の発育に悪影響を及ぼし、若い頃からの飲酒によって依存症になる危険性も上がります」 と書いています。あわせて「10歳代はもちろん20歳代の若年者についても、脳の発達の途中」 とも述べています(厚生労働省, 2024)。
脳の育ち方と関係している
10代の脳は完成品ではなく、まだ形が変わり続けています。 そこに酒が入るとどうなるかを、大人数の脳画像研究が調べてきました。
2024年の系統的レビューは、1つの研究につき飲酒者100人以上という大規模なものだけを集め、 27件をまとめています。妊娠中から高齢まで年代別に見た結果、思春期の飲酒は 前頭・側頭・頭頂の体積や皮質の厚さが小さいことと結びついていました (Karoly et al., 2024)。
ただ、こうした比較には「もともと脳が小さめの子が飲み始めただけでは?」という反論が付きます。 そこで、同じ人を何年も追いかけて、飲み始める前と後で比べた研究があります。
12歳から24歳までの134人を、1人あたり2〜6回、最長8年にわたってMRIで撮りました。 このうち75人が途中から大量に飲むようになり、59人は飲まないか少量のままでした。 飲むようになったグループでは、前頭と側頭の灰白質が減るペースが速まり、 脳梁と橋という配線部分の育ちがゆるやかになっていました。 大麻など他の薬物の使用を考慮しても、この結果は大きくは変わりませんでした (Squeglia et al., 2015)。
記憶に関わる海馬を調べた研究もあります。10代でアルコール使用障害と診断された12人と、 年齢・性別をそろえた24人を比べたところ、左右とも海馬が小さく、 飲み始めが早いほど、また飲んでいた期間が長いほど小さいという関係が見られました (De Bellis et al., 2000)。
早く飲み始めた人ほど、後で依存になりやすい
「早く飲み始めた人は大人になってから依存になりやすい」というのは昔から言われてきました。 問題は、それが酒のせいなのか、もともと依存になりやすい家系や性格のせいなのかです。
これを分けるために双子が使われました。8,169人の男性の双子を調べ、 遺伝も育った家庭も同じはずのきょうだいの間で、飲み始めた年齢だけが違う組を比べたのです。 その結果、17歳より前に習慣的に飲み始めたことと、大人になってからのアルコール依存や 薬物使用との結びつきは、遺伝と家庭環境だけでは説明しきれませんでした (Grant et al., 2005)。
言い換えると、「早く飲む家系だから」だけでは片づかない部分が残った、ということです。
良い影響のほうは
探しても見つかりません。 大人については「少量なら体にいい」という説が長く議論されてきましたが (それも怪しくなってきました。少量のお酒でも身体に悪いの?)、 10代を対象に、飲んだほうが良かったという結果を報告した研究は見当たりませんでした。 そもそも、法律で禁じられている行為の利益を調べる研究は成り立ちません。
ただし...
「早い飲酒は原因ではなく目印だ」という強い反論があります。 アルコール依存症の親を持つ子どもと対照群あわせて395人を、思春期から成人期まで 追跡した前向き研究では、13歳以下での初飲は、他の危険因子を考慮に入れると、 成人後のアルコール依存・薬物依存のオッズと無関係になりました。 著者らは「早期の飲酒開始は、後の依存の原因というよりリスクの目印である」と結論づけています (King & Chassin, 2007)。 上の双子研究とは逆向きの結果で、この点は決着していません。
脳画像の研究はどれも観察研究です。 割り付けて飲ませる実験はできないので、 「もともと衝動性の高い子が飲み始めやすい」という逆向きの説明を完全には排除できません。 Squeglia らの論文自身が、結論で「大量飲酒が唯一の原因なのか、いくつかある要因の1つなのかは 分からない」と留保を置いています。
個々の研究の規模には差があります。 海馬の研究は12人対24人で、 この分野としても小さい部類です。ここだけを取り出して強く読まないほうがよいと思います。
「思春期に特有の壊れ方」が示されたわけでもありません。 2024年の系統的レビューは、影響が出る部位のパターンは思春期も成人もよく似ていると まとめています。10代だけが特別に脆いという形では、まだ描き切れていません。
そして、脳の体積が小さいことが、その後の生活の何にどうつながるのかは、 これらの研究からは分かりません。 体積の差と、成績や仕事や生活の質との関係までは 測られていないからです。
日本の10代を対象にした大規模な脳画像研究は見当たりませんでした。 ここで挙げた研究は主に欧米のもので、飲み方の習慣も飲み始める年齢も日本とは違います。
なお、厚生労働省のガイドラインが依存症の根拠として挙げている Grant & Dawson (1997) は、要旨を確認できなかったため、数値は引用していません(原著未確認)。
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参考文献
- 二十歳未満ノ者ノ飲酒ノ禁止ニ関スル法律(大正十一年法律第二十号). https://laws.e-gov.go.jp/law/211AC1000000020
- 厚生労働省 (2024). 健康に配慮した飲酒に関するガイドライン. https://www.mhlw.go.jp/content/12200000/001211974.pdf
- Karoly, H. C., Kirk-Provencher, K. T., Schacht, J. P., & Gowin, J. L. (2024). Alcohol and brain structure across the lifespan: A systematic review of large-scale neuroimaging studies. Addiction Biology. https://doi.org/10.1111/adb.13439
- Squeglia, L. M., Tapert, S. F., Sullivan, E. V., Jacobus, J., et al. (2015). Brain Development in Heavy-Drinking Adolescents. American Journal of Psychiatry. https://doi.org/10.1176/appi.ajp.2015.14101249
- De Bellis, M. D., Clark, D. B., Beers, S. R., et al. (2000). Hippocampal Volume in Adolescent-Onset Alcohol Use Disorders. American Journal of Psychiatry. https://doi.org/10.1176/appi.ajp.157.5.737
- Grant, J. D., Scherrer, J. F., Lynskey, M. T., & Lyons, M. J. (2005). Adolescent alcohol use is a risk factor for adult alcohol and drug dependence: evidence from a twin design. Psychological Medicine. https://doi.org/10.1017/s0033291705006045
- King, K. M., & Chassin, L. (2007). A Prospective Study of the Effects of Age of Initiation of Alcohol and Drug Use on Young Adult Substance Dependence. Journal of Studies on Alcohol and Drugs. https://doi.org/10.15288/jsad.2007.68.256