栄養って一度に取っても大丈夫?

健康 食事習慣確度: 中〜高

一言でいうと...

「体をこわすか」で言えば、ふつうの食事の量なら大丈夫です。

ただし「ちゃんと吸収できるか」は栄養素によって違います。 鉄のようにまとめると明らかに損をするものもあれば、 タンパク質のように「上限は見つからなかった」という結果が出ているものもあります。

詳しくは...

「害がない」と「無駄がない」は別の話

まとめて摂ることの心配には、2種類あります。 ひとつは体に悪いのではという心配。もうひとつは吸収されずに捨てられるのではという心配です。

前者は、ふつうの食事やサプリの範囲ではあまり問題になりません。 問題になるのは後者のほうで、しかも栄養素ごとに答えが違います。 性格の違う3つを順に見ていきます。

鉄は、まとめるとはっきり損をする

いちばん分かりやすいのが鉄です。

鉄が不足ぎみの若い女性54人に、40mgから240mgまで量を変えて鉄を飲んでもらい、 目印をつけた鉄(安定同位体)が実際にどれだけ体に取り込まれたかを測った研究があります。

結果はこうでした。

  • 量を6倍(40mg → 240mg)に増やしても、実際に吸収された鉄は3倍(6.7mg → 18.1mg)にしかならなかった
  • 60mg以上を飲むと、24時間後まで吸収率が35〜45%下がったままだった
  • 1日2回に分けて飲んでも、朝2回ぶんより多く吸収されはしなかった

Moretti et al., 2015)。

理由は、鉄が入ってくると体がヘプシジンという物質を出して、 次に入ってくる鉄をせき止めるからです。しかもこの門は24時間ほど閉じたままになります。

だからこの分野では「毎日きっちり」より1日おきが合理的だ、という話になりました。 鉄欠乏性貧血の女性19人に、100mgと200mgの鉄を連日と隔日で飲み比べてもらった研究でも、 隔日のほうが吸収は多かったと報告されています (Stoffel et al., 2019)。

ビタミンCは、あるところから先は尿に出ていく

次はビタミンCです。こちらは吸収を止められるというより、体に留まる量に天井があるタイプでした。

7人の健康な人に4〜6か月入院してもらい、ビタミンCが1日5mg未満という食事を続けたうえで、 30mgから2500mgまで7段階の量を与えて血中と細胞の濃度を測った研究があります。

  • 血中濃度の伸びは200mgのあたりで頭打ちになり、1000mgで完全に飽和した
  • 白血球のほうは100mgで飽和した
  • 単回で飲んだとき、200mgまでは全部吸収された
  • 500mg以上では吸収率そのものが落ち、吸収された分も尿に出ていった

Levine et al., 1996)。

著者らはこの結果から、当時60mgだった推奨量を200mgに引き上げるべきだと述べ、 1日400mgを超える量には明らかな価値がないと書いています。 一度にたくさん摂っても、体に残る量は増えないということです。

ところがタンパク質は、上限が見つからなかった

ここまでの2つを見ると「やっぱりまとめ食いは損だ」で終わりそうですが、 タンパク質では逆の結果が出ています。

長いあいだ、筋肉づくりに使えるタンパク質は1回20〜25gが上限で、 それ以上は燃やされて終わり、と考えられてきました。

ところが、まず40gと20gを比べた実験で、40gのほうが筋タンパク合成が大きいという結果が出ます (Macnaughton et al., 2016)。 体格(除脂肪量)の大小はこの差に影響していませんでした。

さらに2023年、100gという極端な量で確かめた研究が出ました。 4種類の目印を同時に使って、食べたタンパク質が体のどこに入っていくかを追跡したものです。

  • 100gは25gより、反応が大きく、しかも12時間以上と長く続いた
  • 摂った量に応じて、血中のアミノ酸も、筋肉に取り込まれる量も増えた
  • 余ったアミノ酸が燃やされている、という説明は支持されなかった

著者らは「反応の大きさにも長さにも上限はなく、これまで過小評価されてきた」と結論しています (Trommelen et al., 2023)。

まとめると

  • 安全性の意味では、ふつうの量なら大丈夫。
  • 効率の意味では、栄養素しだい。 鉄ははっきり損、ビタミンCは天井あり、 タンパク質は少なくとも100gまで上限が見えなかった。
  • だから「まとめて摂ると吸収されないのでは」は、半分あたりで半分はずれです。 何を摂るかによって答えが入れ替わります。

ただし...

  • 鉄の研究の対象は「鉄が足りない若い女性」に限られる。 Moretti et al. (2015) はフェリチン20µg/L以下の非貧血女性、Stoffel et al. (2019) は 鉄欠乏性貧血の女性である。鉄が充足している人、男性、高齢者で同じ形になるかは分からない。 ヘプシジンは炎症でも上昇するため、感染症や慢性炎症のある人ではさらに事情が違う。
  • ビタミンCの研究は7人。 Levine et al. (1996) は4〜6か月の入院という徹底した設計で、 この種の研究としては質が高いが、人数は7人である。 また測っているのは血中・細胞内の濃度であって、健康上の結果ではない。 「濃度が飽和する」ことと「それ以上摂っても健康に意味がない」ことは、厳密には別の主張である。
  • タンパク質の研究は運動後の回復期を見ている。 Trommelen et al. (2023) も Macnaughton et al. (2016) もレジスタンス運動の直後という条件で、対象は若い男性が中心である。 運動していないとき、高齢者、女性で同じかどうかはこの2本からは言えない。
  • 「筋タンパク合成」は代替指標である。 合成速度が上がったことと、 数か月後に筋肉が増えていることは別の話で、ここで引いた研究は後者を測っていない。
  • 3つの栄養素から全体を一般化できない。 ここで見たのは鉄・ビタミンC・タンパク質だけである。 カルシウムや脂溶性ビタミンなど、まとめ摂りの影響が違いそうな栄養素は扱えていない。 そもそも吸収の仕組みが栄養素ごとに違うことが、この記事の結論そのものでもある。
  • 栄養素は単独では来ない。 実際の食事では、ある栄養素が別の栄養素の吸収を助けたり 妨げたりする。組み合わせの影響は今回のサーベイでは扱っていない。
  • 完全食そのものを長期に評価した研究は確認できなかった。 1日分を1食にまとめる食べ方が、何か月も続けたときにどうなるかは、 ここで挙げた急性の吸収実験からは分からない。
  • 1日1食のような極端な形は、この記事の範囲外。 総摂取量、血糖の動き、食欲など別の論点が絡むため、吸収効率だけで判断できない。

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ChatGPT Grok Claude

参考文献

  • Moretti, D., Goede, J. S., Zeder, C., et al. (2015). Oral iron supplements increase hepcidin and decrease iron absorption from daily or twice-daily doses in iron-depleted young women. Blood. https://doi.org/10.1182/blood-2015-05-642223
  • Stoffel, N. U., Zeder, C., Brittenham, G. M., et al. (2019). Iron absorption from supplements is greater with alternate day than with consecutive day dosing in iron-deficient anemic women. Haematologica. https://doi.org/10.3324/haematol.2019.220830
  • Levine, M., Conry-Cantilena, C., Wang, Y., et al. (1996). Vitamin C pharmacokinetics in healthy volunteers: evidence for a recommended dietary allowance. Proceedings of the National Academy of Sciences. https://doi.org/10.1073/pnas.93.8.3704
  • Macnaughton, L. S., Wardle, S. L., Witard, O. C., et al. (2016). The response of muscle protein synthesis following whole-body resistance exercise is greater following 40 g than 20 g of ingested whey protein. Physiological Reports. https://doi.org/10.14814/phy2.12893
  • Trommelen, J., van Lieshout, G. A. A., Nyakayiru, J., et al. (2023). The anabolic response to protein ingestion during recovery from exercise has no upper limit in magnitude and duration in vivo in humans. Cell Reports Medicine. https://doi.org/10.1016/j.xcrm.2023.101324